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■コルクを抜くまでの保存方法や温度管理は?

ワインセラーは保存に適していない?
窮屈すぎるワインセラーの空間、その理由は・・・。

■ワインの上手な購入方法を教えて!

よくある質問の一つ、ワインはどんなお店で買うのが良いのか。
コストパフォーマンスの良い仕入れとは?
沢山種類を置いてあるお店のワインは高い?その理由とは・・・。

■ワインはご飯のようなもの?

フランス人は多くの日本人が毎回違ったワインを首をかしげながら飲む姿を見てびっくりしています。
日本人は毎回毎回違うお米を買うでしょうか?多くの方はお好みのお米があります。
同じようにワインも同じものを飲み続けることでワインに対する基準ができるようになります。

■ボルドーとブルゴーニュ

日本ではボルドーとブルゴーニュはフランスの2大生産地として、ワインの双璧のように言われていますが、実際のところは?ヨーロッパでのブルゴーニュの赤ワインの評価は?

■ワインは栓を開けてからどのくらいの時間美味しく飲める?

ワインや好みによりますが、一般に売られているワインなら30分位といったところでしょうか。しかし、カベルネソーヴィニョンの割合が高いものは2時間位経ったほうが美味しい場合が多く、何と開けてから翌日の方が美味しくなっているワインも??

■ボルドーの赤ワインは他と何が違うのでしょう?

ワインの歴史、生産量、どれをとってもボルドーは世界を圧倒しています。
フランスにとってそしてヨーロッパの歴史においてボルドーは大変重要な都市です。
フランス史上2度もボルドーに首都が置かれたことをご存知ですか?

ソムリエの追言「こんな味だったけ? ボトルの個体差について その1 」



ソムリエの追言
「こんな味だったけ? ボトルの個体差について その1 」

「うん、何かこの間、飲んだ味と違う・・」
こんな経験ありませんか? 美味しかったワインを、
もう一度と思い、飲んでみると、こんな味だったけ?と、感じること。

先日、我々は、シャトー・ラ・ジョンカード 赤ラベルの1985年 同一ヴィンテージのワインを2本用意し、試飲しました。 なかなか、2本同じワインを飲み比べることって、少ないと思うんです。

その結果は。 色合いは同じ。でも 香りは、ナッツの香りなど成分は似ているけど、強さが違う。 そして味わいも、果実味のボリューム感、余韻(よいん)の長さが違っていました。

これって、どういうことなんでしょう。
これが、いわゆるボトルバリエーションなる、ボトルの個体差です。
樽とブレンド・タンク
今では、ワインつくりには樽(たる)が欠かせなくなりました。 樽も、自然の産物です。  樽職人(たるしょくにん)によって、作られていたとしても 木目の密度(みつど)、焼き目の焦()がし具合など、まったく同じものを作れるわけがありません。

つまり、樽が違えば、できあがるワインも異なるということです。

樽

もちろん、この違いを、そのままにしておくわけはありません。 大きなタンクに移し変え、均一にしています。 とはいえ、タンクの大きさにも限界があります。

年間の生産量すべてを均一にする大きさのタンクなんてそうそうありません。
ですから、何度かに分けておこなう。

タンク

あの数が少ない(年間6~7,000本しか生産しない)ゆえ、高額なロマネ・コンティでさえ、 樽とタンクの関係で3種類の味わいがあるといわれているらしいのです。

一方、ボルドーのトップシャトーは約12万本!一度にタンクには入れられないでしょう。
となると・・・。

さらには、1970年くらいまでは、先のタンクによるブレンドは行なわれてないばかりか、 ビン詰めも一度にではなく、2度、3度に分けて行なわれたとのことなんです。
つまりは、樽で過ごす時間が長いものと、そうでないものがあるわけです。

ワインとしてビンに詰められた段階から、いくつかの微妙な味わいの差が生まれているということです。

元気注入?延命措置?リコルク
以前にもお話したように、コルクにも品質の差があります。 そして、コルクにも寿命(じゅみょう)があります。 品質の良いコルクで、長くて30年くらいでしょうか。

ボトルとコルク

それ以上のコルクは、非常にもろくなっています。
1946年のワインのコルクは、中心が貫通して、開けるときに完全に砕けました。
あと、コルクの質や状態が悪いと、スクリューを挿()すと、コルクが下がっていったりします。 コルク本来の役割になってない状態です。

こうしたコルクの劣化とは、弾力性がなくなり、ただの栓と化し、ほんのわずかな隙間(すきま)ができ、 酸素の急激な進入や、ワインの液漏れの原因にもなります。 実は、生産者のもとにあるビン詰めされた古いワインは、 コルクの寿命を見越して、リコルクといって、コルクを打ち替えます。

長い年月によって、コルクで栓がされていても、ワインはゆっくりと蒸発していきます。
ほんの少し、量が減っているわけです。
ワインボトル

そこで、減った分を補うため、若いビンテージのワインを補充する場合があります。 若いワインを補充することによって、酸化に対する元気を注入してるわけです。 そして、新しいコルクで栓をする。 そうなんです。 ですから、蔵元(くらもと)にある古いワインと、そうでないワインの味わいは違う事があります。

世界に一つだけのワイン
「この間と・・・違う」というのは、もしかしたら、料理、季節や気温、パートナー、その場の雰囲気、体調、 そういったもので違う感じなのかも知れません。 人間の味覚なんて、絶対のものではないことは、皆様ご存知のこと。 (たとえば、標高の違いで高度が高くなると、味覚が鈍くなります)

しかし、実際に、ご紹介したように同じワインでも、造る段階から違うということもあるのです。 まさにワインが、工業製品ではなく、農産物であることを表していると思います。
ヴィンテージがあることも、その表れですが、同じ年のワインでも、微妙に違う。
まるで、形や味もそれぞれ違う果物や野菜と同じように。
そして、この微妙な差は、更に年月が経てば経つほど、大きくなってくるのです。

そう考えると、 その時に出会った美味しいワインは、最高のワインであり、唯一無二(ゆいつむに)の存在なのかもしれません。 そこが、ワインの難しさでもあり、魅力でもあると思うのですが、いかがですか?


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ソムリエの追言「心に届け!~贈答ワイン~」



ソムリエの追言
「心に届け!~贈答ワイン~」



元フランス大統領のジャック・シラク氏は、巧みな外交戦術で知られています。
華やかな歴史の舞台裏では自国のワインを「贈り物」として上手く利用してきました。

シャトー・ムートン・ロートシルト在任当時の2003年、アメリカのブッシュ大統領やイギリスのブレア首相にお気に入りのシャトー・ムートン・ロートシルト1989年を贈って友好関係を保ったのは有名な話です。

※一般的にボルドーでは1990年が当り年だと言われますが、 シャトーによっては1961年に準ずる良い年です。
因みにChateau La Joncard では1989年が一番良く、ブラインドテイスティングでフランス1に成った年です。(かの有名なペトリュスはその時5位)

「プレゼントにワイン」というのもずいぶん一般的になってきました。
中には、自分で飲むよりも人に贈るほうが多いという方も いらっしゃるのではないでしょうか?


【感謝の想いをワインにこめて】
ワインは飲み物でありながら長期保存も出来るとあって、 受け取る側にとっても変にプレッシャーを感じる事なく、 送る側も用途や予算に応じて幅広い種類の中から選べます。
普段ワインを飲まない方でも頂くと結構嬉しいものです。

ご存知の方も多いと思いますが、
ワインを贈る場合に気をつけた方が良いポイントは

・予算を決める
・相手の好みをリサーチする
・特別な贈り方を決める

世界中で作られるワインの銘柄は20万種類とも30万種類とも・・・
こんな膨大な中から漠然と探すのは気の遠くなるような作業です。

フランス以外の国で作られるワインもたくさんあり、それらが悪いとは言いません。 しかしボトルデザインなども贈り物にするにはちょっとチープな感じの物が多いので、 選ぶときはフランス産を選んだ方が無難だと思います。
その上で、金額を決めればずいぶん探しやすくなってきます。

次に相手の好みをリサーチしましょう。
とは言っても贈る相手から、 事前にあれこれ細かく聞きだすのは難しいものです。
白が好きなのか赤が好きなのか その程度が分れば十分だと思います。

ちなみにMICHIGAMIワインのホームページから選ぶ場合、
ご質問いただければその時ぴったりのワインをお勧めさせて頂きます。
お気軽にご相談ください!

とは言え、中には答えられない質問もあります。
たまにMICHIGAMIワインをプレゼントされた送り先から 「このワインはいくらするんですか?」とお電話を頂くことがあります。 お返しなどの事情で値段を知りたい気持ちも分かりますが、 こういったご質問にはやんわりとお断りをさせて頂いています。
せっかくご連絡頂いたのに申し訳ないと言う気持ちを伝えながら・・・。

木箱入りワイン ワインの味わいはもちろんですが、贈り物は外観も大切です。
木箱に入ったワインは雰囲気があってとてもお洒落です。


最後に渡し方です。
可能であれば、直接手渡しするのが一番気持ちを伝えやすいと思います。 誰にでもという訳にはいきませんが、直接相手の反応を見られるのも魅力です。 配送するにしても贈る相手があまりワインに詳しくない場合、 特に夏場であれば「冷蔵庫に入れてね」と一言添えた方が良いでしょう。

中にはジュースやコーヒーの詰め合わせと同じ感覚で、 何日も玄関先や棚の中に放置してしまう方もいるようです。 せっかくのワインなので、美味しく飲んで頂きたいですね。

記念年とワインのヴィンテージを合わせるというのも喜ばれます。 バースデーヴィンテージに限らず、結婚した年や仕事を始めた年など、 色々と絡める事も出来ると思います。 過ぎ去りし歳月を含めて味わう事が出来るのはワインの魅力の一つでもあります。

私が23歳の頃、 当時お付き合いをしていた女性に誕生日プレゼントで 生まれ年のワインをプレゼントした事があります。 新宿にある、夜景がきれいなレストランを予約し、あまりお金もなかったので、 ネットで4,000円ぐらいのワインを持ち込みさせてもらったのですが、 飲んでみるととっくにピークを過ぎていて、 彼女には残念な思いをさせたのではないかと 悔しくて今でも後悔しています。 それでも思いが通じれば十分!

※そのレストランの持ち込み料は3,000円でした。ワイン代と合わせると7,000円・・・ それでもレストランで20年物のヴィンテージを飲もうと思えば普通は2万円以上します。

ワインは熟成による品質向上と徐々に市場での本数が減っていくので希少価値が出るという面もありますが、生まれ年のワインを・・・というような場合、20年以上前のワインで美味しく飲めるものはそれなりに造りと保管がしっかりしていないと持ちません。


道上の独り言
ちなみにシラック元大統領はビールしか飲みません。
たまに森伊蔵を飲んでいたようですが・・・。
それを渡していたのが、日経新聞の佐久間副社長。
フランスでサミットの時に森首相に日本で一番美味しい酒を飲ますと言って 差し出したところ、同じ名前なので帰国後早速鹿児島の森伊蔵に行ったそうです。

もう高いレストランにご招待するのは あまり流行りません。
安くて美味しい所をご案内する喜び
ご案内したお客様が早速その店に家族連れで
予約される様子は満足に値します。

ワインも同じです。
高いワインを送るのではなく ”え!?これ美味しいけどいくら位するの?”
と聞かれる位が最高です。

心にも無い名前だけの贈り物より
リーゾナブルで美味しいワインを
プレゼントされたほうが喜ばれますよ!



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ソムリエの追言「”時”を飲む悦び ― ヴィンテージワインの魅力 ― 」



ソムリエの追言
「”時”を飲む悦び ― ヴィンテージワインの魅力 ― 」




「頼む・・・生きていてくれ」

シャトー・ムートン・ロートシルト1975年心の中でそう祈りながら ソムリエナイフを握る手にも自然と力がこもります。
その日オーダーされたのは”シャトー・ムートン・ロートシルト1975年”。

随分昔の話に成りますが、当時レストランでは10万円以上する高価なヴィンテージワインですがあいにくお店にあった在庫は1本のみ。
「万が一、劣化していたら・・・」不安が頭をよぎります。

『このワインは当店にある最後の1本ですお客様はラッキーでしたね!』
テーブルの雰囲気を盛り上げながらもやんわりと替えがきかない事をお伝えします。

柔らかく弾力の失われたコルクに1回、2回・・・慎重にスクリューをねじ込みます。
健全なコルクの寿命はおよそ25年、それを過ぎるとコルクはもろく砕けやすく変質していきます。
余計な負荷をかけないようにゆっくりとコルクを抜き取り、ほんの少しテイスティングをさせてもらうと、複雑な熟成感とともに何とも言えない活き活きとした果実味!!
長きに渡る熟成を経たワインだとにわかには信じられません。

口当たりはビロードのようになめらかなのに底知れぬ深みとコク、
丸みを帯びた味わいは複雑さと果実味を感じさせながら長く続く余韻。
寝かせたボルドーワインはどうしてこんなに美味しくなるのでしょうか。
”熟成”という長い時間のみがなせるわざなのです。
良いボルドーほど長く寝かせた方が美味しい。

道上は以前、1800年代後半のラフィットを飲んだ事があると言います。
味は想像もつきませんが、ニューワールドはもちろん
ブルゴーニュのワインでも考えられない事です。

このムートンも熟成のピークはまだまだ先でしょうか。
このワインがさらに5年、10年と円熟味を増していく・・・
いったいどこまで美味しくなるのでしょう。
ポップ・アートの巨人、アンディー・ウォーホルによって描かれた
オーナーのフィリップ・ロートシルト男爵の顔が 微笑みかけているようでした。


【ヴィンテージの価値】
古いワインには、熟成による複雑な味わいとともに ”収穫された年”
  ”ボトルに詰められた長い時間”を感じられるところに 最大の価値があるのでしょう。

一般に言われるように天候による ”当り年”や”外れ年”を示すヴィンテージチャートは 熟成のピークを考える一つの目安にはなりますが、 最終的な味わいを決めるものではありません。
大切なのは、その長い時間をワインがどう過ごしたかという事。
たとえ良家の生まれであっても育った環境が悪ければ 徐々に生活が乱れてくる・・・
ワインにも同じ事が言えるのかもしれません。

レストランなどでよく見るワインセラーは 冷蔵庫よりはすこしマシといった程度で、
美味しくなるという事はありません。

カーブ以前道上はワインの保存について 最高の条件を満たすのはカーブ(地下室)だと述べています。 「ワインも窮屈な場所は苦手なのです」と。

暗くて振動のない湿気のある涼しい場所、しかも風通しが良い・・・ そういう条件の揃った場所で じっと動かさずに熟成させる事がワインにとっては大切です。

有名なサザビーズやクリスティーズのオークションで超高額をつけて話題になるワインは、ワイナリーで直接保管しているものか、世界に2ヶ所しかない指定された保管場所(ロンドン・ニューヨーク)で 厳密に保管されています。ワインが持ち出される事はまずありません。
なぜなら、その場所から一歩でも外に動かすと オークションでのワインの価格が大きく下がってしまうのです。 動くのは伝票だけです。 所有者は動きますが、ワインは動きません。

そういう意味では、いかに有名な高級ワインと言えども 一般に出回っているオールド・ヴィンテージは 流通経路や保管状態が不透明です。
ワインが難しいと思われがちなのは、 この辺りがややこしいからなのかもしれません。

一般の消費者の方にとって もっとも安心出来るのは、
生産者と直接やり取りし シャトーで熟成させたワインを 直輸入している所だと私は思います。

高級デパートで高そうな木箱に入って売られている年代物のワインでも
必ずしも中身も保障付きとは言えないのが現状です。

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ソムリエの追言「ブドウも!? チョイ悪オヤジがモテる理由 樹齢について」



ソムリエの追言
「ブドウも!? チョイ悪オヤジがモテる理由 樹齢について」


樹齢
●外国の方の読者も多くいらっしゃるので、漢字にふりがなをつけてお送りしております。

M「そうそう、シャトー・ラ・ジョンカードの各ラベルの説明に
樹齢(じゅれい)の話があるんですけど 樹齢によってなにか違うんですか。 」

K「いいところに気がつきましたね、説明しなくちゃと思ってたとこなんですよ。」

M「でも、『赤ラベルの樹齢45~55年の充分に成熟(せいじゅく)した』 って、
もうすっかり、中年ですよねぇ」

K「年齢(ねんれい)だけで判断(はんだん)しない!」

M「ど、どうしたんですか」

K「いや、つい何か ある種の感情が・・」

K「確かに、人間でいえばそうかもしれないですね。
ただ、ブドウ樹(き)の寿命(じゅみょう)は 100年、200年とも言われているんですよ。」

M「そんなにですか、では、45年といったら、働き盛りなんですね。」

K「うーん、そこはまた、微妙(びみょう)で、
ワイン造りのブドウは大抵50~60年 くらいで植え替えられます。
悲しいかな、これが現実。」

M「なんか、変な感情移入してませんか。」

K「まぁブドウによっては、30年から80年とまちまちらしいけど。」

M「では、やっぱり働き盛りを過ぎてるんですよね。」

K「だから、年齢で人を判断しないでと・・・」

M「ブドウの樹の話です。」

K「そう、確かに若いブドウの樹が持つパワフルさには勝てないかも しれない。
しかし、彼らにはない、知識(ちしき)・経験(けいけん)・
判断力(はんだんりょく)・実績(じっせき)がある。」

M「彼らって・・・。知識・経験って・・。」

K「うーん、バランスだったり、成分的に優れた、趣(おもむき)があるというか。」

M「ブドウがより上質ということですか。」

K「そうだともいえる。」

M「どうして、上質なブドウが出来るかきちんと説明してください。」

K「実は、逆説的(ぎゃくせつてき)なんだけど、良いワインのぶどうを作るには
ブドウの樹に とって、厳(きび)しい条件が必要なんだ。」

M「たとえば、どんな条件ですか。」

K「水と養分(ようぶん)なんだ。これが、限られているところが理想だそうだ。」

M「 あまり、与えたりしないということですか。」

K「そう、甘やかしちゃダメなんだ。ブドウの樹も人も。
与えてばかりでは、弱くなってしまう。」

M「 ですから、ブドウの話で具・体・的・にお願いします。

K「もし、君が痩(や)せている土地のブドウの樹だったら
生き延びていくためにはどうする?」

M「 いきなりすごい質問ですね。そうですね、
えっと、誰もなにも、与えてくれないんですか。」

K「最低限の水分や養分はある。」  

M「とりあえず、じっとしてますね。
自分のエネルギーを節約します。」

K「不景気育ちの若者は、これだから・・・。」

M「何か言いました?聞こえませんよ。」

K「でも、より成長していくためには、何か努力(どりょく)が必要だよね。」

M「なにか、自己啓発(じこけいはつ)のセミナーみたいですけど・・・。
うーん、そんなところ居たくないですね。引越しは?」

K「ブドウの樹は動けません!だから、自(みずか)ら努力して探すしかないんです!」

M「探すって、何処をですか?畑は痩せてるんですよね。」

K「そう、畑は痩せてるけど、地中奥深くには
まだまだ水分と養分が たっぷりとある!」  

M「・・・そうか、わかりました!根(ね)っこですね。
根っこをどんどん下へ伸ばしていけばいいんですね。」

K「学校で習ったと思うけど、地中は、いろいろな地層(ちそう)で成り立っているよね。 樹齢が長ければ、長いほど、時間をかけて根が成長し、いろいろな地層からミネラル分などの養分を水分と共に取り込んでくるんだ。」

K「ここから、ブドウの実(み)が樹齢によって成分的に質が違うといわれているんだ。科学的に証明されてはない話なんだけど。 でも、ブドウの樹の根は長いと地中深く12mまで伸びていることも確認されているんだ。そう考えると・・・。」

M「12m!そんなに、深くですか。 それなら、根っこが1mの若い樹とは全然違う養分を吸収してるでしょうね。 科学的な根拠(こんきょ)はなくても、樹齢と根っこの長さから、出来るブドウの質が違うということ、 何か分かる気がします。」

K「こうした狙いから、ワインのブドウ畑は、農作物には向かないような厳しい環境、痩せた土壌(どじょう)にして、 根を下に向けさせているんだ。また、恵(めぐ)まれた環境にしてしまうと、根は下に伸びず、 横へ広がってしまうともう一つ困ったことになる。」

M「となりの樹とぶつかってしまうとかですか?」

K「それもあるけど、一番は雨。 地表近くに根が多くあると、
雨が降ればその影響をモロにうけてしまう。
つまり、水分が多く吸収されてしまうということ。」

M「それがなぜ、ダメなんですか。」

K「ワイン造りのブドウは、水分は必要最低限ありさえすればよく、他の成分が濃縮(のうしゅく)していたほうが 濃くて、熟成(じゅくせい)にも向く上質なワインになるといわれているんだ。」

M「みずみずしいブドウの方が美味(おい)しいワインができそうなイメージありますけど・・・。」

K「美味しいワインは出来ると思う。
でもきっとそういうワインは、長期熟成はできないはず。」

K「 だから、ヨーロッパをはじめ、高級ワイン、長期熟成ワインをつくっているところでは、 収穫(しゅうかく)前の数週間、長く雨が降らない時期をうまく過ごして、 雨が降ると思われるぎりぎりのところ直前まで、 完熟させること 成分を濃縮させることに神経を使っているんだ。」  

K「他所(よそ)と差をつけるため、収穫日を決めるのが、駆け引き(かけひき)となっているくらい。 一日でも遅く収穫するほうが良いのだが、タイミングを逃して雨が降ったら、残念な結果に・・。」

M「どうなるんですか。」

K「ワインが水っぽくなるんだそうだ。せっかくの成分が薄まるというイメージかな。 薄まるといえば、ブドウの実自体につく水分も、駄目なんだ。だから、収穫日に霧が晴れない状態では収穫しないし、雨の日などもってのほかだね。」

M「ブドウの実に付く水分で、薄まるのは分かるんですけど、
根っこからの、水分吸収(きゅうしゅう)がそんなに、影響するんですか。」

K「これは想像(そうぞう)だけど、やはりブドウの実は、自分の可愛い子供みたいなもんじゃないかな。 つまり、雨からなどの水分を吸収すると、真っ先に、ブドウの実に水分などが運ばれてしまうんでは。子孫(しそん)を守るために。」

M「根っこが地表に近いと、大量の水に接してしまって
それが吸収されていくということですか。」

K「そういう意味でも、根が地中深くにあった方が影響を受けにくいよね。」

M「そうなんですか、だから、根っこが下へ向いて伸びている、
イコール 樹齢の長いブドウの樹からのワインが 上質ワインである目安になるんですね。」

M「やっぱり、ブドウの樹も、若い子より、いろんな遊びを知っていて
ちょっとしたトラブルにも動じないチョイ悪オヤジ系がいいんですね。」

K 「いや、そういう話では・・・。」 


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ソムリエ追言「冷奴とアイスとワインと温泉卵 の関係~添加物について~」

添加物について


ソムリエの追言
「冷奴とアイスとワインと温泉卵 の関係~添加物について~ 」

●外国の方の読者も多くいらっしゃるので、漢字にふりがなをつけてお送りしております。

M「ワインって、ブドウだけで造(つく)られるのではないんですね。 」

K「いきなりどうしたの」

M「実は、友達にワインを勧(すす)めたら、添加物(てんかぶつ)を使ったものを口にすると頭が痛くなるといわれて・・・ ワインには添加物が入ってるんですよね。」

K「いやいや、そんな、添加物といっても心配するほどではないよ。」

M「え、どうしてですか。体に悪いとか言われてません?」

K「その辺は専門家(せんもんか)にまかせるとして、
ところで添加物については、知っている?」

M「なんとなくですね。お弁当などの保存料(ほぞんりょう)として、
使われたりしてるものがそうですよね。」

K「そうだね。あとは、ハム・ソーセージやかまぼこなどの加工食品(かこうしょくひん)をつくる際にも、使われているね。私達が口にする加工食品をつくるときに使われるもので、その素材と水を抜かしたものを添加物と呼ぶんだ。 食品を長持ちさせるために、添加物を加えるといったところだね。」

K「それとは、別に。たとえば、うーん、そうだ、冷奴(ひややっこ)は好きかい?」

M「なんで、冷奴なんですか、ワインの話聞きたいのに。 冷奴が添加物で作られているとでも?」

K「うん、昨日の夜、冷奴だけだったから・・・。 と、いうより、豆腐そのものが添加物の作用で出来ているんだ。大豆と「にがり」。 この「にがり」が添加物だよ。」

K「添加物による食品として、歴史あるものなんだが、
添加物が加えられているイメージないよね。 あと、こんにゃく もそう。」

K「それに、つめたーく甘いアイスクリーム。これも、添加物の働きで出来ているんだ。
昔からある健康的な食べものや、誰もが口にする食べ物が添加物でできてるんだ。」

M「添加物に囲まれた暮らしの中で生きてきたとでも言いたそうですね。
でも、みんな同じ添加物ではないですよね。」

K「もちろん、添加物の種類はたくさんある。それぞれ役割も違う。」

M「それで、ワインの添加物ってなんですか。本題に戻って下さい。」

K「代表的な物は亜硫酸(ありゅうさん)
二酸化硫黄(にさんかいおう)とも呼ばれている。酸化防止剤(さんかぼうしざい)だ。」

M「亜硫酸。なんか硫酸という響(ひび)きが嫌(いや)ですね。体に悪そう・・・。」

K「うーん、確かに呼び方としても、別名 「防腐剤(ぼうふざい)」なんて呼んでたりするしなぁ。」

M「やっぱり、彼女にワイン勧めるのやめます、私も・・」

K「待った!待った! 勝手に判断しない!話はこれから。」

K「その亜硫酸、ワインを作るときに添加するのだが、時間がたつにつれ、他の成分とくっついて、本来の亜硫酸でなくなってしまうんだ。難しくいうと結合型(けつごうがた) 亜硫酸と呼ぶらしい。」

K「あと、揮発性(きはつせい)も高いので、ワインの中に存在しているものは、コルクを開けて  グラスに注いだ時点で亜硫酸のほとんどは抜けてしまっているんだ。」

M「ほとんどということは、まだ残っているんですよね。」

K「それは、事実。しかし、健康を害しない基準(きじゅん)がとりきめられていて、
それに 基づく量になっているので心配することはないと思うよ。」

K「そうそう、亜硫酸の影響(えいきょう)を受けているものは、温泉卵(おんせんたまご)があるね。温泉卵が体に悪いとか聞いたことあるかい?  あと、脅かすわけではないけど、亜硫酸自体は、天然(てんねん)にも存在する物質で、あらゆる食べ物に微量(びりょう)に含まれているんだ。 加工食品はもちろん、野菜も魚にも。ビールにだって含まれているものもある。」

M「え、そうなんですか。つまり、亜硫酸は、知らずに摂取(せっしゅ)していると。」

K「これは、想像だけど、ワイン1本に含まれる亜硫酸より、
一週間で口にする食べ物に 含まれている亜硫酸のほうが多くなる場合だってありうるってことだ。」

M「 えーっ!」

K「でも、今まで、亜硫酸のせいで、どこか悪くなってるかい?」

M「いいえ。というか、意識してませんでしたから。判りません!」

K「健康を害しない基準があるといったけど、これによれば、
大人が毎日1本飲んで 80年間飲み続けても問題ない量になっているんだ。」

M「 でも、誰か試したわけではないんですよね。

K「いや、故 道上伯 さんは、亡くなる90歳まで、毎日2、3本飲んでたらしい!  
ただ、確かに、それ以外では実験結果からの予測でしかないね。」

K「ただ、実際に使われている量は、この基準の半分以下がほとんどで、
ワインの造り手も、極力減らそうとしているんだ。」

M「 なら、使わなくてもいいじゃないですか。なんで、亜硫酸なんか使うんですか。」

K「ブドウを潰して果汁からつくるワインの宿命なんだ。でないと、常温の中で空気にふれていれば、 バクテリアの餌食(えじき)にもなるし、どんどん傷(いた)んでいってしまう。 例えば丸ごとのリンゴと半分に切ったリンゴ。どちらが、先に色が変わって傷むと思う。」

M「誰でもわかる例えですね。切ったリンゴです。」

K「その切ったリンゴを塩水や、レモン水に付けとくと?」

M「色が変わりません。変わりづらいかな。」

K「そう、ワインでは、亜硫酸をを加えることによって、果汁のときも、ワインになってからも酸化やバクテリアから守ることができるし、 さらに再発酵(はっこう)の防止や爽(さわ)やかなワインやゆっくりと熟成(じゅくせい)したおいしいワインを生み出すこともできるんだ。」

M「へぇー、そんな役割(やくわり)があるんですか。
なんか、輸出(ゆしゅつ)の為だけに、酸化防止剤として入れてるんじゃないんですね。」

K「そうなんだ。いつの間にかそのイメージが出来てしまったようなんだ。
イメージといえば、亜硫酸を最後に添加してる感じを持ってないかい?」

M「違うんですか」

K「もちろん、ボトルに詰める前のろ過の時もあるが、その時だけでもない。」

K「樽などでの熟成が終わった後のオリ引き時や、収穫(しゅうかく)したブドウの除梗(じょこう)の時にも亜硫酸を使う時がある。 すべてのワインとはかぎらないが、その時、その時と亜硫酸によって、果汁・ワイン、ひいてはワインづくり全体が守られているんだ。」

M「亜硫酸がワインを守っていることは理解できました。けど、コンビニやスーパーで売っている、酸化防止剤無添加(むてんか)ワインは亜硫酸が入ってないんですよね。」

K「そうなんだ。でも、長所があれば、短所もある。そういうワインは、熟成はしないし、早めに飲まなければならないんだ。 もう一つ、亜硫酸を使わないでワインを作ること自体は難しくない。 ただ、販売のために、ある程度保管されることを前提にした場合は・・・」

M「場合は、何ですか。」

K「果汁を凍らせたり、バクテリアの活動を抑えるため、醸造所(じょうぞうじょ)はもちろん、収穫したブドウがある処や果汁になった後の全ての場を低い温度にしたり、空気に触れさせないようにと、そのための設備が必要になったりするはずなんだ。」

M「何か、大掛かりですね。イメージ的には、
一番自然に、素直に作られていると思ったんですが・・・・。」

K「自然のままのワインつくりに何が必要かを知っているのは、やはりワイン先進国のヨーロッパだろうね。 そのヨーロッパが、いまだに添加してつくっているにはそれなりの理由があるんじゃないかな。」

K「それと、フランス人が1人当り年間に飲む量は50リットルを超えてるんだ。 日本人はその25分の1以下、2リットルにも届いていない。 その日本人が、亜硫酸を気にしすぎるのもどうなんだろう。 もともと、アルコール自体、飲みすぎれば健康を害するものなんだから。」

M「でも、化学製品のアレルギー体質や、ぜんそくを患(わずら)っている方には深刻(しんこく)な問題ですよ。」

K「そうだったね。ならば、 万一、あくまで万が一なんだけど、
亜硫酸と相性が悪ければ、特に甘口のワインは避(さ)けておいたほうがいいかも知れない。」

M「なぜですか。」

K「多くの国で、甘口ワインの方が亜硫酸を添加できる基準量が多いからだよ。」

M「えー、彼女に勧めたの、デザートワインですよ。
甘くて美味しい、ワインというか飲むスイーツだからって・・・。  
やっぱり勧められないじゃないですか!」

K「基準量が多いからといって、必ずしも添加している量が多いというわけではないと思うけど・・・。」

M「確信はないんですよね。」

K「・・・はい。」

K「うーん、言いづらくなった感があるが、亜硫酸の他にも使われてる添加物が・・・。」

M「他にもあるんですか!」

K「そんな風にいわなくても。」

K「後は保存料として、ソルビン酸が使われることがある。」  

M「ソルビン酸ですか。なにか、これも・・・。あっ、何か、目にした気が。」

K「お弁当やハム・ソーセージ類を含め様々な食品に使われている添加物で、必ず目にしてきているはず。 このソルビン酸は、特に甘口のワインに使われるという話なんだよね。」

M「また、甘口ワインですか。」

K「亜硫酸の補助(ほじょ)的な役割として、
やはり、ワインを安定させることが目的なんだ。糖分が残っていて、酵母があると・・・。」

M「発酵する!」

K「さすが!それを防ぐために酵母を抑えるのに添加されるというワケ。 でも、醸造所の衛生(えいせい)面、醸造技術も進化してきているせいで、ソルビン酸 の使用は減ってきているんだ。」

M「甘口のワイン飲む人も減ってきてますもんね。」

K「そんな風にいわなくても。」

K「あとは、」

M「まだ、あるんですか!」

K「アスコルビン酸といって、こ・れ・は、ビタミンCだ!」

M「なにか、自慢気(じまんげ)に言ってませんか?」

K「やはり、酸化防止剤として亜硫酸の補助の役割、
しかもフレッシュな辛口白ワインつくりの果汁に 添加されるビタミンCだ。」

M「2回も言わなくていいです。」

K「とまあ、こんなところがワインに関係する添加物ですかな。日本はかなり前から、添加物に関する表示義務があるから、亜硫酸(二酸化イオウ)の表示はよくみると思う。 EU諸国(しょこく)のワインも、2005年より表示しなければならなくなったようだから、ラベルを参考(さんこう)にしてワインを 選ぶことも勧めてみればいいんじゃないかな。また、造り手によっては、同じワインでも亜硫酸無添加のワインを作ってリリースしているんだ。 圧倒的(あっとうてき)に数は少ないけど」

M「へぇー。そうなんですか、日本だけではないんですね。」

K「とにかく、これだけ市場にワインがあるわけだから、飲みわけてもいいと思うんだ。
美味しく感じる、感じないは人それぞれだから。
ただ、酸化防止剤 無添加だから 健康に良い
亜硫酸 添加だから 健康に悪い と決め付けるのは問題があると思う。
もちろん、美味しいワインが飲めればそれでいいと思う。

K「できるなら、こんなシーンが望ましいな。
「あ、このワインなかなか美味しいな、」 とボトルに手を掛け、裏ラベルをみて
「そうか、亜硫酸 無添加だから フレッシュな感じが活きてるんだ!」 なんて。
私の理想としては、 無添加を売りにするんではなく、味でワインの存在感(そんざいかん)を出してほしい。
そんなワインに出会うことを楽しみにしてるんだ。」

M「最後は理想論(りそうろん)で終わってしまいましたね。

いかがでしたか、添加物とワインの関係、ご理解いただけましたでしょうか。  

それはそうと、長文お読み頂き有難う御座いました。  

【道上の独り言 】
私の友人で世界最大の添加物研究所をチンタオ(中国)で遣って居た男がいます。 彼曰く今日、添加物の入って居ない食べ物は稀有だと、ましてやそうでないものは別のもっと悪い物が入っていると。

ワインに亜硫酸を入れる話は聞いた事が無い。 作る段階で害虫から守るために使用される事が殆どです。よく葡萄が黒光りして(紫色?)見えますね! あれがそうです。 あと50年以上のワインでリコルクする事があります。水かさが減るため付け足すのです。その際に多少入れる事はあります。

赤ワインはお酒の中で唯一のアルカリ性です。健康のために飲む人も多いのです。 ワインは本来全てオーガニックです。ただオーガニックの表示が出来るためには色んな検査・指定条項があり お値段が高くなってしまいます。 私はオーガニックと表示されるものは基本買いません。コスパが悪いからです。 弊社で扱っているシャトータランスはオーガニックの表示がありますが、偶々です。


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