外交官 第3話 「国民生活にも意外と近い外交の仕事」
東大柔道部OB
丸の内柔道倶楽部
第3話国民生活にも意外と近い外交の仕事
レセプションや会食は仕事のほんの一部だ。それ以外の場ではけっこう重労働だ。国内勤務は通常は外務省が主な仕事場であるから、日本の役所のひとつとして厳しい勤務環境の中で夜遅くまで、ときには未明まで、刻苦精励する。
接する相手は、他省庁の人たち、政治家・政党、ジャーナリスト、企業の人、国民各界各層の人々、外国人等である。役所のしがらみや政と官の関係もあるから、楽しいこともあるが楽しくないこともある。
外交は内政とも一体であることが多い。「役所の権限争い」として非難されることが多いが、私も政府のほとんどの省庁と「喧嘩」をした。例えば、旧大蔵省(現在の財務省)は国の財政を扱う立場から、農水省は農業を守り育てる立場などから発言し行動する。
外務省は国を発展させるためにはどうしたらよいかとの「国益」意識を持っている。その中には国際的に協調しながら日本の利益を実現しなければならないことが多い。個別の業界を守る必要はあるが、より広い日本全体の利益も考慮する必要もある。そこで、ある問題について国際会議で日本の方針を表明するときや外国からの個別の要求にどう対応するかを決めるには国内の異なる利害を調整しなければならない。
それぞれの省庁には強い立場があり、意見が激突して連日未明まで議論を続けることもある。各省庁とも真剣に「これが国民のためだ」「日本全体のためだ」と思って消耗戦になったりもする。
今日議論になっているTPPもそうだが、もっと小さな個別の問題でも省庁間の立場は異なることが多い。外交が扱う仕事の内容は千差万別である。
私が経験した国内での仕事には、国際法の問題、国際経済問題、地域(欧州諸国)との関係業務、途上国援助(ODA)、外務大臣秘書官などがある。少しイメージを持っていただくため、いくつか例を挙げてみる。
条約局は若い頃の勤務だが、日本で「金大中事件」が起こった。韓国の情報機関が日本に逃れていた野党の金大中氏を拉致して本国に連れ帰った事件だ。
外国の機関が日本で公権力を行使したこの「主権侵害」の行為とは国際法上どういうもので、日本が韓国に対していかなる要求をすることが可能かなどという問題について、国際関係の先例を調べたり、国会答弁を準備したりした。
ソ連のミグ戦闘機が北海道に飛び込んでソ連の兵士が亡命してきた事件があったが、国際法上のパイロットや機体の扱いについても法理論や先例などを調査した。
日本漁船が他国に拿捕された事件については救出方法や法的な対応の在り方を検討する作業にも関わった。
経済局では、先進国サミットに参加される総理や大臣の発言内容の準備とか、日本経済が盛んなりし1980年代に他国との間で起きたありとあらゆる貿易摩擦解決のために相手国と交渉したり、市場開放を目指した国内関係省庁や業界との調整作業が毎日深夜まで続いたことも懐かしく思い出される。
貿易摩擦の例を挙げる。オランダからのチューリップの球根は検疫の観点からすぐには輸入できず、一定期間日本の圃場で育てて検査してからでないと国内の市場で売れない。
スイス産の美味しい生ハムが日本の定める「水分活性値」に合致しないとして輸入できない問題もあった。
その他、輸入外国車の規格に関す規制、輸入スキー板の強度に関する規制など、実に何百何千という輸入品に関した日本の国内規則が、輸入障壁として世界中から非難され、しばしば首脳レベルでもとり上げられた。
フランスからも、葡萄酒の関税が高いとか日本産の葡萄酒のラベルがフランス産と間違えるようなデザインでけしからんとか、随分しつこく批判され是正を要求された。
外務省は、外国に対しては反論し、国内に向いては合理的でない規制は見直し妥当なラインで妥協することを求めなければならない。
外交が随分と現実の日常生活と絡んでいることも実感した。ヨーロッパ担当局では、各国との個別の懸案処理はあるが、総理の訪欧準備作業などでは、相手の国との関係を発展させる方策を考え実施する前向きな仕事も多くて楽しかった。
大臣秘書官時代は故園田直外務大臣にお仕えした。園田外相は国内に強い反対論のあった日中平和条約締結にむけて信念を持って推進された方だ。
大臣の仕事を円滑に進めるためのすべての業務を行う秘書官の仕事は緊張感を伴うし激務であったが、政治やメディアに対して条約締結を説得していく過程での政治家としての手腕をお傍で仕えて学ばせてもらった。
最近は、目的達成のため信念を持って障害を乗り越えていく政治家が見られなくなった。悲しい現実だ。
当然のことながら、外交の問題には国会や国会議員もかなり深く関わるので政治家との接触も多い。政治と官僚の信頼感に基づいた連携も多いが、ときには泥臭い仕事もあり、国会議員等から叱られたたくさんの思い出もある。
外交官は知力も体力も必要だが、困難に出会った時の耐性も大事だ。
人生一般にそうだが、叱られたり失敗したりすることは自分を育てる良い「肥やし」になる。だから、卑屈になることは避けながら甘んじて試練を受けてきたが、それも自分のためになったと思う。
ちょっと蛇足かも知れないが、政党や政治家と官僚がお互いに情報を交換して理解し合い、時には緊張感があっても切磋琢磨することが国のためになることは明らかだ。民主党政権の時代にはこの関係が弱くなってしまった。
次回は眼を転じて海外での仕事に触れてみたい。
【小川 郷太郎】 現在 |
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