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名人のこだわり「風味と画一性」


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名人のこだわり
「風味と画一性」

お店の料理については
「あそこのあの料理は、こういう味」という安定感が問われ
「あそこは味が変わった」
と言いますと、悪い意味で使われる事が多いかと思います。
勿論「味が落ちた」というのは別の話ですが、
本来は都度、味が違うものではないでしょうか。

魚はその季節や食べ物、獲り方でそれぞれに味が違ってくる事は
既に書かせていただきましたが、
一匹一匹でもそれぞれに個体差もあり味が違います。
また、違う事を前提として調理も行います。
その際に無理に「こういう味にしよう」としても仕方がありません。
元の味、性質を変えてしまっては本来の美味しさとも違いますし、
無駄にしてしまう事でもあります。

ジビエであれば、ジビエそれぞれの性質、特性とは関係の無い、
血が回っている部分の処理などはします。
ただし、そこでは個性やバランスを見つつの処理をしますが、
そもそもどれも同じ味にしたいのあれば、全部除いてしまえば良いのです。

前回取り上げた苺の話でも同様です。
一年中痛みにくい種類の同じ苺を使うのか、旬に合わせて苺を選ぶのか。

そういった選択は料理に限らず、ワインでも同じです。

このように、安定した味を作っていくのか、
風味や食材のそれぞれの風味を生かした特徴を出すようにするか、
それぞれの店の方向性が出る所です。

鮪とトリュフ
鮪とトリュフ


フォンで作りたい料理は、「作った味でない」というのが理想です。
「大変に手をかけているけれど、自然な物」という料理。

ワインで言えば、摘んだ葡萄をそのままかじったような味のワインでも
実際にはそれを造り出すのに非常に手が掛かっています。

店で食べて、飲み食いした時に、「私の作った料理」では無く、
ただ、野にいるように葡萄の畑にいるように感じられる料理。

そして、シェフとしてやっている以上は、新しい味の物を作りたいです。
まだまだ料理でも「隣にあるのに手を出さない物」、というのは結構あるんです。
これにはこれ、という組み合わせで思い込まれている物も多く
「すぐそばにこれがあるのに」
というのがあっても手を出さない場合があります。

ただ「新しいから、良い」という事では無く、
奇をてらわず自然な料理だけれど、結果として新しい物だった、
という物がいいですね。

「新しいけれど、自然な料理。手が掛かっているけれど自然な料理。」
というのが理想です。

次週は1週お休みをいただきます。



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