名人のこだわり 料理にまつわる「情報」
西村です。
先週はお休みをいただき、京都で還暦のお祝いをしました。
生まれ年に合わせて貴腐ワインのシャトー・クーテの1952年を
いただきました。
名人のこだわり
料理にまつわる「情報」
今は、大変便利にネットで情報を得る事ができますが、
誤解してしまう事に、「情報を集めれば答えが出る」と思ってしまう所があるのかもしれません。しかしそもそも、ネットに全ての情報があるとも限らないのです。
例えばレストランの評価サイトなどでは
お店の情報、料理の写真やふれこみまでは見る事ができます。
それは決して嘘ではありませんし、便利なものですが
一番問題である、職人さんの技術の部分まではなかなか知ることはできません。
フランス料理でも1970年代のヌーベル・キュイジーヌの頃には
「情報公開」という事でレシピや技術などの情報がぱっと広がりました。
それこそ喫茶店までもが
キウイのソースを使った「ヌーベル・キュイジーヌ」の料理を出していたりしました。しかし、実際には核心の情報までが公開されていたわけではなく、「〇〇一派」を作っていく、と言う様な、一種政治的な側面がありました。
ワインの話では、1997年のボルドーは非常に気温が高く、
暑すぎた年でした。しかし、出回っていた情報は
「完熟していてこんなに早い収穫は無い!」
と好意的な情報ばかりでした。
その結果、プリムール(先物買い)の値段の方がずっと高くなってしまい、
多くのネゴシアンが潰れてしまったそうです。
戻りカツオと
万願寺唐辛子の赤と青
ビゴール豚
「現実」の情報を知っているような方たちは
あまり多くを語らない、という所もあるかと思います。
農家の方と話していても、それを感じました。
一見、農家の方達ものんびりした印象に見えますが、
土の成分から何から、本当に細かく見ているんです。
日本はどうしても多湿なので、
うどん粉病などのカビの病気には農薬が必要になります。
その濃度の管理も細かく、「何%を散布して、何日後に収穫」と細かく管理しています。
ジャムや漬物を作る時ですら、
その分量に対して何%の砂糖、何%の塩、としますし、
畑の土壌にしても「ここは水成岩の重粘土」と言う様な事がスッと出てきたりします。
このように、非常に細かい事までも把握してやっているのですが、
それも農家の人達にとっては、そのような事は「当たり前」の事という認識で、わざわざ言わないんです。
話をしているとそういう部分がぽろっと出てきて、
こちらが知る事ができる。
勿論、その情報こそが、
農家の方にとって生活の礎になったりする種類の情報もあるので、
外に出てこない物というのもありますが。
料理人の方でも同じようなところがあります。
「当たり前」の下ごしらえと思っている所、
例えば、魚は身の質が変わってしまうので活けの状態の時にしか下ろしません。
ただ、それが料理として出てくる時には、
見た目にはどのくらいやっているかが出てこないところなんです。
なので、あえてその部分を声高にいう事はありません。
京都の料理人の方などでも、
経験を積んだ方たちが段々と引退され始めており、大変残念です。
どんなに良いお店でも代替わりをしてしまうと、
大抵味が変わってしまいます。
逆に良くなるお店というのもありますが、それは僅かです。
同じ材料、レシピであっても、もちろん血を受け継いでいても、
共有しきれない部分、伝えきれない部分があり
実はその部分こそが、大切な部分なのかもしれません。
そういった本当の意味での「情報」という物は
なかなか伝わっていくものでは無く、
簡単に「これはこうだ!」と声高に伝えられることは
実は大した「情報」では無いのかもしれませんね。
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