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名人のこだわり 「グードテ ~あるいは ”食べ物の食べ物” 」

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名人のこだわり
「グードテ ~あるいは ”食べ物の食べ物” 」

食材に関しては「食べ物の食べ物」、
その物が何を食べているか、
という事が味を変える要因にもなります。

例えば、オーストラリアの放牧している牛は
草臭い、などの特徴が出ます。
家畜の場合は特にその国毎の好みもあってそのように育てますが、
ジビエなどはそれこそ、
その動物が好きに食べているものが特徴に出ます。

ピジョン・ラミエール(山バト)は主に穀類、小麦雑穀を食べます。
鳥というのは特に毛に匂いが出ます。
食べているものの香りが付きやすいんですね。
ある時、大変に渋い匂いが出ているな、と思っていると
喉の所からゴロゴロとブナの実が出てきたことがあります。

そのように同じ動物でも、
地方やもちろん、個体差でも食べ物が違うと
それが味の違いを出す場合があります。

細かい話と感じられるかもしれませんが、
ワインの話で言えば、
その葡萄が育った土地、土壌・・・
そういった所は皆さん気にしますよね。
メドックの土壌、サンテミリオンの土壌、ポムロールの土壌・・・
土は葡萄の「食べ物」とも言えます。
gout de terre(グードテ)「土の味」です。
それにより、同じ葡萄の品種でも味が変わってきます。
食材に関しても同じ事ではないでしょうか。

そこに近い所で言えば、
べカス(ヤマシギ)はその長いくちばしで
土を掘ってその中のミミズなどを食べます。
一緒に土も食べますので、そのものですよね。
それこそ、フランスのワイン用の葡萄畑に放してみたら
そのワインとも共通性のあるものを持つのではないでしょうか。

先日は、吉野の鹿(ニホンシカ)とエゾ鹿が来ました。
この二つは元々種類の違うものですが、やはり大きく味が違います。
エゾ鹿は牧草を食べる事もあるので、
普段は青草の匂いがしますが、その時は牛に似た香りがするんです。
青い味がしないのです。

ちょっと良い猟師さんがいたものの、獲る人が変わってしまって
原因がしっかり聞けなかったのですが、
おそらく牛と同じような穀類を食べていたのではないでしょうか。

良い猟師さんというのは撃ってからすぐ放血をしてしまい、
すぐに処理施設に持っていき、冷やします。
同じ動物を獲っても、そういった部分で違いが出てきます。

海の物で言えば、
ウニは、北海道の昆布を食べるものが美味しい、という所は
皆さんもご存知かと思います。
鮪で有名な大間のウニのムラサキウニにも、とても良い物があります。
津軽海峡の良い昆布があるからでしょう。

余談ですが、ウニの箱詰めの際に
ミョウバンを使うかどうかなどの事もありますが、
実は箱に入れる人の技術で、大きく味を左右する、という事もあるんです。

と、このような
「食べ物の食べ物」という部分を
調理の部分ではどのように意識するかと言いますと、

雷鳥と松茸

以前紹介させていただいた物ですが、こちらは雷鳥と松茸の料理です。

この雷鳥は針葉樹を食べますので、
それを松茸と合せてみました。
このような合せ方で、それぞれの食材の香りが合ってきたりします。

食材に関しても、
ワインで土壌を気にするのと同じように、
「どういったものを食べて育っているか」を気にしてみるというのも
面白いのではないでしょうか。

次週は「料理名について」をお送りします。



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