名人のこだわり 料理の「情景」について
名人のこだわり
料理の「情景」について
調理に際しては
新古今和歌集の春夏秋冬の和歌
あの中の「情景」を思います。
山や花などの自然が詠まれていますが、
実際に出てくるのは山や花そのものでは無く、
その「情景」が詠まれています。
「情景」がまずあって、
その上で、その中で、「桜が綺麗だ」となるんです。
料理の中での食材に関しても同じです。
その食材を、どういった料理、「情景」にあてはめるか、
という事をまず考えるのです。
なので、最終的にやっている事が単純だとしても、
どの情景のどの部分に当てはめるのか、というのが
大事だと思うのです。
ただ単に野菜を切っただけのところに魚介を乗っけただけでも
これの上にこれが必要だと思ったから、
こうする事に情感があるな、と思っているからやるんです。
一方で、素晴しい食材が入っても、
そのまま出してしまっても仕方がない、という事があります。
よく「素晴らしい食材ほど、手を掛けない」
という事を言われますが、私の場合は違います。
素晴らしい食材ほど、しっかり手をかけています。
ワインでも素晴らしい畑の、素晴らしい葡萄を
そのまま潰して「はい、どうぞ」というわけではありませんよね。
それに近いのではないかと思います。
白神山地の鮎
加賀蓮根
ビゴール産のハム
以前、「食材が8割、調理が2割」と言いました。
もちろん良い食材でなければ、どんな調理をしてもどうにもなりません。
しかしどんなに良い食材でも、
しっかりと考えた調理をしなければ、それもまた良い料理にはなりません。
この季節、この時期にこの食材が良い、
というのがまずあって、食材を買い揃えますが
そこからこの「料理の情景」を考え、
どのように調理をするかを決めるのです。
次回は「グードテ ~あるいは食べ物の食べ物」 をお送りします。
▲ページ上部へ