名人のこだわり 「魚について ~鮮度と甘み」
名人のこだわり
「魚について ~鮮度と甘み」
築地で直接仕入れをしていますが
仲買さんとの関係というのは、大変重要な部分です。
ですが、単に「いいお客さん」になる、という事では無く、
買った魚については、良い事も悪い事もきっちり仲買さんに
フィードバックする事で良い関係が築ける、という事があります。
仲買さんも話を伺っていると、本当に利益目的では無く
「良い魚を扱いたい」という気持ちが見えてきます。
こちらもそういう部分では真剣に向き合う事で
信用を頂けるのかと思います。
表面上の、どこどこ産であれば良い、というくらいの話であれば
やはり胸の内ではがっかりされてしまうのでしょう。
更に、ここの物が良い、というのが分かって買っていても
物がおかしい時もあります。
そういう時にでも、しっかり正直にその事を戻してみると
仲買さん自身もふと気付いて、
「あ、今回はこうだった」と思い当たる部分が出てきたりします。
そのように、関係性を造りながらも、
一緒になって良い物を見つけていけます。
伏見の甘長唐辛子
佐島と横須賀の間のカワハギと肝
魚の「甘さ」と一口で言ってしまいますが、
実は「身の甘さ」、「脂の甘さ」という物は
別の物で、質も違う物です。
余り脂ののっていない様な白身の魚の刺身に関して言えば
身がいかっている方が、「身が甘い」ですね。
そういった魚では、
置いておいた方がいい物はあまり無いかと思います。
ただ、早すぎても良くない事もあります。
逆に脂ののった魚というのは
寝かせないと「脂の甘み」を感じない、という場合があります。
シマアジなどはそうです。
アジの仲間や鯛の中でも脂ののったもの、ですね。
「脂が甘く感じる」という事では、置いた方が感じます。
かといって、脂が無い魚を置いたからといって
甘くなるという事ではありません。
締める時には「神経抜き」というやり方があります。
それで持ちが良くなります。
「神経抜き」と言っても
しっかりとそれがなされているかで効果も変わって来るのですが
朝締めても夕方くらいまで動いているんです。
ただ、動かなくなってからおろすのでは
変わらなくなってしまいますので、
動いているうちにおろさなくてはいけません。
もちろん、ここでお話しているのは
ダメになってしまう、食べられなくなってしまうというお話では無く、
味の「質」の部分でのお話です。
その部分で言えば、魚の獲り方の差もあります。
全然違ってきます。
一番違う点は、網で獲った魚は身が緩いです。
持つのは獲った日かせいぜい次の日くらい。
これが困った事に、
包丁を入れた時には、はっきりと差がわかるのですが、
見た目だけではその違いが分かりません。
なので、そこを区別している仲買さんから購入しています。
次回は「料理へのアプローチについて」をお送りします。
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