私と柔道、そしてフランス… ー 第六十七話 パーティー開催ー
早大柔道部OB
フランス在住
- 第六十七話 パーティー開催 -
(第二次大戦後最大の試練といわれる新型コロナウイルス感染症渦の急激な拡大が止まりません。フランスでは去る3月17日に、罰則つき外出禁止令が出され、街から人影が消えました。にも拘らず、状況は日に日に悪化していて、驚くような数字が並んでいます: 感染者数:78,167人 / 死亡者数:10,328人)
予定通り、「(株)ロレコス設立記念パーティー」が開催されました。招待者の中心はマスメディアで、次に多かったのは在日フランス商工会議所会員企業幹部の面々でした。肝心のコーセーからは、ロレアルの全ての製品の製造を担当している狭山工場の関係者のみ。
不思議なことに、スコットからの参加者も限られていました。彼らも、我々とコーセーとのトラブルを知っていて、その原因が彼らに関係していることも承知しており、コーセー社員との接触を控えたかったようです。従って、問屋の参加もまったくなかったように記憶しています。
私個人として嬉しかったことは、柔道仲間・先輩、元同僚・上司達が馳せ参じてくれたことでした。
フランスへの道を開いてくれた佐藤経一先輩やフランスへの一ヶ月の船旅を共にした大国伸夫君。ソルボンヌ大柔道部員だったフェレ君。早大柔道部同期の桜達。
前列:中央・安本
日本電子入社後の研修で、営業の厳しさを教えてくれた平井さん・滝鼻さん。JEOLスウェーデンで活躍していた遠藤さん。東欧担当支配人・内山さん。
開催できるかどうかも懸案されたパーティーが無事終わってから、コーセーとスコット各社との打ち合わせが頻繁に行われるようになりました。両社からいつも同じ問題が提起されました。廉売・乱売問題です。
コーセーは、ロレアル製品は「再販制度(注1)」の適用を受ける商品であり、廉売は絶対に許されないとし、さらにその影響が自社の製品の廉売・乱売につながることを真剣に危惧していました。
スコットはこの制度自体を自由で公正な競争を阻害するとして、本来は独占禁止法で禁止されている「不公正な取引方法」に該当する制度である、と非難していました。
欧米の市場は、自由で公正な市場であり、その中で成功を謳歌してきたメーカーのロレアルとしては、スコットの考え方を“良し”としたいところでしたが、それを主張することは、コーセーとの関係の崩壊を意味するので、それを主張する雰囲気は全くありませんでした。
一方、我々に対する両社の共通の要望は、できるだけ早く、シャンプー/リンス/トリートメントを発売して欲しいということでした。
当時の高級シャンプー市場を握っていたのは、ドイツのウエラ(WELLA)社のジェントルケアー・ラインで、クオリティーはもちろん、特にその「森林の香り」が若い女性の圧倒的な人気を得ていました。
もちろん、ロレアルとしても、世界至る所で成功しているエルセーヴ・ラインの処方を日本人の髪に合わせたものにするためにテストを繰り返しており、翌年に発売する目処はついていました。
(注1)
再販制度:メーカーが自社製品の販売価格を決め、卸・小売業など流通業者が消費者に売る(再販売する)際に、その価格を守らせる制度で、当時は1000円以下の化粧品についてのみこの制度が認められていた。
次回は「第六十八話 ロレアルの決断」です。
【安 本 總 一】 現在 |
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