外交官 第17話  日本は世界から尊敬される大国である

2015/10/05

【小川 郷太郎】
全日本柔道連盟 特別顧問
東大柔道部OB
丸の内柔道倶楽部
外交官

第17話 日本は世界から尊敬される大国である

日本人は謙虚であることや世界的視野に乏しいこともあって、世界の中での自分の身の丈をあまり認識していないようだ。しかし、日本は客観的に見ても「大国」であるし、実際世界からもそのように見られている。

「大国」の基準が明確に定まっているわけではないが、一般的には、人口、経済力、軍事力などから判断されることが多い。これらの要素について見ると、人口減少期に入った日本には現在約1億2600万人ほどの人口があり、世界ランキングではロシアに次いで第10位である。

国民総生産(GDP)で計った経済力は、ご存じの通り、最近中国に追い抜かれたとはいえ、まだ、アメリカ、中国に次いで3位だ。

科学技術も日本は世界有数の高いレベルにあるので、経済力の質に厚みや重みを加えている。この人口と経済力からだけしても、もうれっきとした大国の資格がある。

防衛力(軍事力)はどうかというと、軍事力の計算基準が複雑なので難しい。日本は平和憲法のもと「専守防衛」を唱えて核兵器を含め攻撃的兵器を持たず、防衛費をGDPの1%程度に抑えてきたが、世界第3位の経済力の1%というのは、客観的にはかなりなものだ。装備品に最新鋭のイージス艦やミサイル防衛システムなども備えている我が自衛隊に対して近隣国が警戒感を持つほどだ。

だから、物理的に見て日本が大国であることは紛れもない事実である。しかも、私に言わせれば、それは単に大国というだけでなく、世界から尊敬されている大国である。

日本より大きいアメリカ、中国、ロシアなどは世界から尊敬されているかというと、そうでもない。民主主義国で、科学や文化が発達しているアメリカに対しては多くの国が敬意や親近感を抱いているが、それでもアメリカが嫌いだったり反発する国の数はかなり多い。腕っ節(軍事力)が強くて尊大な姿勢をとるロシアや中国への反発や警戒心を持つ国も少なくない。いずれも、外交・軍事政策や相手国に接する姿勢などが他国の反発を呼んでいる場合が多い。

ところが、日本は世界の殆どの国から好意的に見られ、さらには高い尊敬を受けている。なぜかというと、一定の防衛力(軍事力)は持っていてもそれを振りかざすこともなく平和憲法のもと専守防衛に徹して攻撃はしない。何事にも相手国と真摯に向き合い誠実に接する。

援助(ODA)においては、政治的意図はなく途上国をあまねく支援し、高い技術力を持ってそれを好意的に途上国に移転しようとする。そして、一方的に技術移転を図るのでなく、相手国と相談しながら、相手国の自立のために人材養成に力を入れる。

ビジネスにおいても、誠実に交渉し、納期を守り、問題が起こればアフターケアでしっかり対応する。

またあとで述べるが、日本は世界に稀な文化大国である。歌舞伎や能などの古典芸能、浮世絵、書画などの美術、すし、和食などの食文化、若者が好きな漫画・アニメやポップミュージックなど実に幅広い分野で世界中の人を惹きつけている。

ひっくるめて言うと、軍事力でなく、科学技術、援助などの分野で他国に協力し、文化や融和的な人間の資質などで他国の敬意を勝ち取っているのである。
これらの経済技術力、平和主義、ODA、文化力などは日本のブランドともいうべきで、このような多様なブランドを兼ね備えた国は他にあまりない。日本より大きな「大国」も日本を真似できない。いわば、個性的日本が世界を惹きつけているのである。

政治や外交の面では現在関係がうまくいっていない中国や韓国においてさえ、このような「ソフトパワー」のある日本や日本人に好意的関心や親近感を持つ人たちは非常にたくさんいることも事実である。

多くの日本人自身はこうした事実を知らなかったり意識するには至っていないが、私はこれまで世界中の人々に接して、日本のこのようなブランドを強く感じ、また誇りに思っている。

次回以降ではもう少し具体的にお話してみたい。


筆者近影

【小川 郷太郎】
現在





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