名人のこだわり
「フグについて ~「支え」の味」 前編
フグについては、白身魚の中の一つとして捉えています。
しかし、その中でもかなり特殊な魚と言えます。
まず大きな違いとして、
普通の魚は泳いでいるのを締めてから
長く持っても3日くらいのもので、その間でも変化が大きいです。
フグの、特に天然の物ですと
4日は食感が変わらないままに持ちます。
白身ですとダレて来て水が出るのも早いですが、
フグはそれが遅いのです。
フグの唐揚げ
フグについては、 その味についての表現も難しい魚かと思います。
金額の面からもありますが、 その味について語られる事が少ないのは、
フグの味の性質にもよるのでしょう。
「だし」で考えていただくと、その感覚が分かりやすいかもしれません。
「鰹節のだし」と「昆布だし」を考えてみてください。
鰹節は旨味がぱっと来ますが、味の「厚み」はありません。
一方で昆布だしは、「支え」になるものです。
それこそ鰹節に合わせて使ったり、湯豆腐や魚にも使う。
そういう「支えになる旨味」と言え、安定した味ではありますが、
香りを除いてしまうと、昆布の味自体が前面に出ている料理というのは少ないと思います。
フグはこの「昆布だし」の感覚に近いと思うのです。
同じ白身の魚で言いいますと、ヒラメは「鰹節」に近いです。
美味しいヒラメは旨味がはっきりとしています。
フグはそれとも違い、味がたっぷりしている感じがあっても、
旨味がぱっと前面に出てくるものではありません。
そのような所から、
「どのように表現して良いか分からない味の魚」と捉えられているのかと思います。
鰹節のような、旨味のはっきりした味の物の方が多い事もあるのでしょう。
一方で、フグと良く合うワインは赤です。
かなり安定的に合いますので、「手堅い」組み合わせとして扱るほどです。
この事からは、フグの味の「芯の太さ」をわかっていただけるかと思います。
次回は「フグについて」の後編をお送りします。