名人のこだわり
「魚について ~寿司と刺身の違い」
お寿司というのは
人肌のシャリの上にわさびがあり、その上にネタがある。
醤油やツメを塗ったりします。
その魚の個性が出た方が美味しい、
味と言うよりも、香りが立った方が美味しく感じるんです。
お寿司で美味しい、と思ったマグロでも、
それを刺身で食べると受ける印象はまた変わってきます。
お寿司屋さんによっては
刺身のつまみをあまり出さない店もありますね。
寿司に合せた魚を揃えるからです。
勿論、刺身を出すお店でもお寿司と刺身の魚を完全に分けている、
という事もあります。雲丹でもそのように分けるお店もあるくらいです。
お寿司屋さんでいろいろと考えあわせたうえで判断をされているかと思います。
白身の魚を出すタイミングですが
置いておくと旨みは増しますが、甘みは抜けてしまいます。
この事なども、どちらが良いと言い切れない部分ですね。
白神山地の銀鮎
「FONDの歩み④ 日本の「フレンチ」の苦労」次に勤めたのは銀座の店です。
35,6年前くらいですのでフレンチも今と当時とでは大違いでした。
「エシャロット」ってありますよね。
今はその辺りのスーパーでも買えますが、当時では手に入らなかった。
今でいえば味噌をつけるようなラッキョウの若いの・・・
それが「エシャ『レ』ット」などと言って売られていました。
と、例えば、レシピに「エシャロット」、
と親方のメモがあってもそれは「玉ねぎ」の意味なんです。
元のレシピにある物、それが入れられないんですよ。
当時では仕方ない事でもあったんです。
その頃、友人が大学の卒業記念で
ある有名なホテルで何か食べたい、という事で行ってみたんです。
「ピジョン」が食べたいと、頼んでみた。
一人前の皿がいくらだったと思います?
当時で2万円です!
ピジョンも輸入されるのは冷凍のみ、というような時代だったんです。
「ソースを作るのにクリームでやるんだって」と。
ある店から広まっていきましたが、
それまでみんな小麦粉で作っていた。
「バター」と言っても高級ラードやホテル仕様のマーガリン。
良い所ではその上澄みだけ使う、などという事もありましたが、
当時はそんなだったんですね。
そういった、物自体が中々手に入らない事で苦労も、
勿論その中での工夫もありました。
次回は「魚について~鮮度・甘みについて」をお送りします。