ワインのコルク栓もいろいろありますね。 コルクについてのご質問もいくつか頂戴しておりますので 今回は意外と知らないコルクのお話です。
コスト面とコルク臭(しゅう)の問題です。 まずは、天然コルクは高い!それよりもコストが抑えられます。 コスト高の天然コルクにこだわる最大の理由は、ワインを長期間、ビンで熟成(じゅくせい)をさせるため。 そうでないワインであるなら天然(てんねん)にこだわる必要はないのです。
その上、天然コルクは、ずーっと、コルク臭に悩まされています。 木のような香りと、味わいがワインについてしまうアレです。 天然コルクを使う全ワインの2~5%の割合で、発生してしまうそうで、 世界全体で考えると、すごい量です。 年間約150億本の流通の5%とは、ボルドーワインの全生産量に匹敵する量になるんですね。
飲む人はもちろん、作り手にも、イヤな思い、ダメージを与えるこの不良品。 プロならば、これは、「コルク臭」だから美味しくないとわかっても、 知らない人は「このワインが美味しくない」と思ってしまうわけですから、困りものです。
この、不良品として扱われるコルク臭が、合成コルクでは、ほとんど発生しないそうなんです。 それなら、天然コルクを使い続けなくてもいいのでは、との考えるのは当然ですよね。 そのため、当店と半世紀以上に渡り取引のあるシャトー・ラ・ジョンカードでは、2003年から一部、合成コルクに切り替えたそうです。
化学反応で起きているようです。 決してコルクの香りが強すぎて、ワインに移っているわけではありません。 コルク栓を作る際、雑菌(ざっきん)などをなくすための消毒(しょうどく)の溶液(ようえき)と、コルク栓に残っている塩素(えんそ)と、 ある種のカビによって、TCA(トリクロロアニソール)という成分が発生して起きているんだそうです。
コルクに塩素がなぜ残っているかというと、昔、コルク林で使われていた塩素系の除草剤(じょそうざい)などが原因のようです。 なお、現在は使用されていないとのことです。
原因究明がされてから約30年、対策はいろいろ行なわれてきていますが・・・。 完全になくすのは難しいようです。
そうそう、この「コルク臭」、 「Bouchonne ブショネ」 と表現されるのを レストランなどで聞いたことがあるかもしれません。 これは、フランス語の「Bouchonブション 栓」 からきています。 つまり「Bouchonne ブショネ」は「栓の臭いがする」、 転じて専門用語で「コルク臭がする」という意味で使われています。 ちなみに、ソムリエなどが、ワインを開けるときに行なうコルクを嗅ぐしぐさ。 ブショネかどうかをまず、判断してるんですね。
でも、本当に判ってるのかなって思いませんか? そう、コルクだけで、ブショネと判断できる時は、かなり、強いブショネのレベルで、 誰もが異変に気づく、ワインが飲めないレベルの話。 微妙なレベルは実は、10億分の1。ナノ・レベル(ng/L)の世界です。 ワインを飲まずに完全に判断するなんて、無理なんです!
合成コルクを使っていくことにしたのですが、 合成樹脂のイメージがやっぱり、手がけているワインにそぐわないとして、よりコルクの質感のある 圧搾(あっさく)コルクにしたとのことです。 別名、圧縮(あっしゅく)コルクと分類されるタイプのもので 現地では「Technique」 テクニカルコルクと呼ばれているものです。
コルクの細かい粒を集めて、栓型につくったものです。 これに似たタイプは、シャンパーニュなどのスパークリングのコルク栓です。 外観から粒のあつまりがはっきりと見えます。 このタイプのコルクは、コルク臭への対策がされており、天然コルクよりも、 コルク臭の発生が格段に少ないことが特徴です。低コストも魅力のようです。
コルク樫(かし)の木から樹皮(じゅひ)の部分だけを剥(は)ぎ取ります。 伐採とは違い、コルク樫は樹皮を剥がしても、枯れずに、新たに樹皮をつくられていきます。 樹齢(じゅれい)20年に達してから最初に剥がした樹皮「一番皮」は使わず、 9年後に成長した二番皮を剥がし、その又9年後の3番皮で、初めてワインのコルク栓として使われます。 非常に長い時間を要するのです。
次に、剥ぎ取った樹皮を数週間から数ヶ月積み上げて熟成と乾燥をさせ、丸みを伸ばしていきます。 その後、栓の丈の大きさのブロックにカットし、高速回転のノミの機械で打ち抜いていきます。 全自動の機械もあるようですが、コルクは木ですので、場所によって素材が変わるので、熟練の職人によるもの がやはり質がいいようです。 ちなみに、ワインみたく等級があります。なんと 7階級もあるそうな!
コルク部分は、他の樹木が繊維(せんい)でできているのに対し、細かな穴の集合体に例えられます。 その穴、細胞(さいぼう)なんですが、1立方センチ当り2,500~4,000万個の細胞質で出来ており その中は、空気に似たガスが含まれています。
よって、弾力性にすぐれていて、押し込んだあとの復元力で、栓としての密閉性が高くなります。 また、その無数の細胞質とガスによって、液体を吸い込むのが、非常に遅い特徴と、 変質がすくないことから、液体の保存に向いているとして使われてきたのです。
造り手が目指すワインにあわせてコルクが使い分けられています。 長期熟成をさせるワインには、より長いコルクが選ばれていますね。 長いコルクだと、ガスを含んだ細胞の穴の層が長さの分たくさんあるわけで、 それだけ、酸素の影響をゆっくりとすこしづつ、受けることになり、 ゆるやかな熟成が行なわれていき、美味しいワインになるわけです。
そのタイプのワインは、たいてい高価な場合が多いため、 いいワイン・美味しいワインと くくられてしまうんですね。
とはいえ、そういうワインは、飲み頃をむかえていれば、美味しさを感じますが、 熟成前であれば成分自体が強すぎて、美味しさを感じないことも・・・。 長いコルクであることは熟成向きのワインの証で、品質の高いものが多いですが、 飲む時期によっては、必ずしも美味しいワインとは限りませんので・・・。
ちなみに通常のコルクは4cmから5cmなのですが、中には6cmのコルクを使うワインもありますね。 コルクも奥が深いですね!