ワインを保存する時に気をつけなければいけないのは、
・温度
・湿度
・光
・振動
と言われています。
そして道上はそれに加えて風通しと言っています。ワインのボトルを空気がよどんでいない所に置いておく事も必要だとか。
ヨーロッパに限らず、日本の山梨や長野県でもワイナリーにある地下ワインセラーは湿気が十分にあるものの風通しを良くしてあり、中に入ってもじめじめしていません。 確かにコルクでしっかりとふたをされていても、空気のよどんだところに置いてあったワインはあまり飲む気がおきません。
そういうことであれば家庭にあるワインセラーは、温度、湿度は大丈夫ですが、光、振動、風通しについてはワインの保管に関して最適とは言えません。透明なガラス扉ですと光を通し、コンプレッサーの振動があり、風は通りません。 そうなると家庭用のセラーも、冷蔵庫も機能的にはそんなに変わらないのかも知れません。
何十万円もするような高級ワインであれば、家庭用のワインセラーよりもいっそどこかの地下セラーに預けた方が良いのかもしれません。
理想的な温度で、湿度があって、暗くて、振動が無く、風通しもあります。
ワインの一番の大敵は温度変化と言われていて熟成に最適な温度は白ワインで10度、赤ワインで14度と言われています。ワインが30度を越えるような高温に急になったりすると、ボトルの中のワインが膨張してしまい、ふいたりして味が悪くなってしまうと言われています。
ラベルが汚れたワイン、見たことありませんか。コルクの隙間から噴出してしまい、たれてフィルムキャップやラベルを汚してしまったワイン。そのワインを開けると、コルクの周りに固まってしまったワインがこびりついてしまっています。一度高温になってしまったワインはコルクが汚れてしまっていますが。適温で保管されたワインのコルクはきれいなままです。
一度ふいてしまいコルクが汚くなったワインは良い香りはまったくせず、舌触りもイガイガとして美味しくありません。ただ程度によっては一度冷やしてあげると、美味しく飲めるようになる物もあります。捨ててしまう前に是非一度試してみてください。
私が以前軽井沢に住んでいた時の事なのですが、よくワインを買っていた酒屋さんがありました。お店にセラーが無く、冷房があまり効いていない酒屋さんでした。 今でこそ軽井沢にはワインショップが増えていますが、25年程前ですと軽井沢でワインを売っているお店はその酒屋さんぐらいしかありませんでした。
そのお店で一番初めに買ったワインは赤ワインでブルゴーニュとボルドーです。 すると案の定ブルゴーニュの方はブドウ酒らしい味わいは無く、渋味や酸味が気になり、飲んだ後には口の中にイガイガと残る嫌な味わいでした。
一方でボルドーのワインは、ヴィンテージを考えると熟成が進みすぎている感じはありましたが、(2005年の時に、2000年ヴィンテージだったと思います)美味しく飲めました。
渋味や酸味が適度に落ち着いており、何よりも口の中にイガイガと残る感じがありません。
ワインの味で言うとボルドーワインの方が渋味が強いので、イガイガする感じが出ても良い気がします。ですが、ブルゴーニュにはイガイガする味わいの物が多く、ボルドーは美味しく飲めるものが多かったです。
ワインは同じ保存状況でしたので、ブルゴーニュのピノ・ノワールの様に繊細なブドウ品種ですと、温度に気を使う必要がありますが、ダメージを受けづらく、もし受けたとしてもダメージから回復しやすい酒質の強いワインは普段飲む時にはそこまで気にする必要が無いと言う事なのかも知れません。例えばボルドーのカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、南フランスのシラーやグルナッシュの様なワインです。
振動によりワインがゆれると中のワインがゆれ、静止状態よりも酸素がワインに溶け込んで酸化を促進し、成熟を早めます。 成熟を早めると言う事は、より酸化が促進されているという事です。
ワインを長期保存しようと思ったら、あまり酸化しないようにしてあげれば良い訳です。 ワインは酸化するとお酢に近い状態になります。お酢は水より軽いから、ワインより上に来ます。そうなると、一番上の部分はお酢でふたをされた状態になる訳です。
お水に少量の油をまぜてしばらくほうって置くと上の方に油があがってきますが、同じ様な状態になります。 本当に薄い膜ですがふたをされた状態になり、その分ワインが空気にふれないので、ワインの酸化が遅くなります。
ワイナリーにあるような振動の無い地下ワインセラーで静かに休ませておいたワインが先に出荷されたワインよりも若々しく感じる時があるのは、振動がほとんど無く、薄いお酢の層でしっかりとふたをされたため、ワインの酸化が進まなかったためなのかも知れません。
振動があるとそのお酢に近い成分がワインに混ざっているためふたができず、より酸化しやすい状態になります。場所が無い事や、コルクの乾燥があるので、横にして保管するのが当たり前になっていますが、十分な湿度の場所で立てて保管した方が赤ワインの場合、澱も沈むので、良い保管だと思います。
ボトルを開けてからもお酢の層ができている事を実感できるお酒があります。
ワインバーであまり注文する人がいない、長期熟成のポートワインやマデイラを頼んだ時に一杯目があまり状態が良くない時があります。上の方にお酢の層ができてしまっているためです。
そのおかげでワインの酸化が遅くなっていたりするのですが、 それを飲んでも美味しくはありません。
ワインバーで、長期熟成して美味しそうなポートやマデイラを注文して酸っぱく感じた時に2杯目を頼むとひょっとすると味が違っているかもしれません。
保存する時だけでなく、買ってきたワインを飲む時も気をつけなければいけません。
ワインショップで自分で買ってきたワインを大事に運んできた時は良いのですが、ネットショッピングで買って宅急便屋さんが運んできてくれたワインは、数日休ませてあげた方が美味しく飲めます。
長旅をさせたワインは休ませた方が美味しく飲めると言われていますが、それは振動によってワインが疲れてしまっているからです。
長旅と言うほどの距離ではありませんが、ワインの保管庫から運ばれてきたワインは多かれ少なかれ疲れています。
例えば、毎年11月第3木曜日に解禁されるボジョレー・ヌーボー、解禁その日に飲むより、数日休ませてから飲んだ方が美味しく飲めます。ガメイ種のブドウを使ったフルーティーな味わいが楽しめるワインですが、飛行機でゆられて日本にやってきて、しかも車に乗せられて運ばれてくるため、いかにも疲れたトゲトゲとした味わいで甘さをあまり感じません。
数日後に飲むとそのトゲトゲが無くなってワインの甘さを感じるようになります。解禁当日に開けたワインの残りを次の日に飲んでも美味しくなっている時があります。 若いワインでも疲れるんです。それが少し熟成されたワインであれば、なおさらだと思います。
ワインの大敵とされているものに、光もあります。女性は紫外線を気にされている方が多いと思いますが、お肌へのダメージ以上にワインにとって紫外線は大敵です。
少し難しい話になりますがワインが紫外線にあたるとビタミンや有機酸の分解が進み、酸化していきます。何よりも光があたる事によって、ワイン自体が温まってしまいます。
特に紫外線をそのまま通してしまう透明なボトルは要注意です。色のついたワインボトルは少しでも紫外線の影響を受けないように色がついています。
ワインを熟成させる必要が無い時は透明なボトルが選ばれているようです。 熟成をさせる必要が無いワインであれば、紫外線の影響を受ける前にワインが消費されてしまうので、色のついたボトルを使う必要がありません。
具体的に紫外線でワインの味がどう変わるかと言うと、前回に引き続きビールの話になってしまいますが、少し古くなってしまった瓶ビール飲んだ事はありませんか。瓶ビールも紫外線にあたってもできるだけ悪くならないように、色のついたボトルを使っています。(日本のビールは100%ですし、輸入ビールも透明なボトルはほとんどありません)
日光にさらされたビールは変に酸っぱくなって、ぼけたリンゴの様な味になってしまっています。屋外で放置されて太陽にさらされたビールは賞味期限が切れる前に飲んでも美味しくありません。ワインでも同じ事がおきてしまいます。
長々とワインの保存について書かせていただきましたが、高級ワインの保存なら別として、数ヶ月程度のワインの保存ではもう少し気楽に考えても良いのかも知れません。とは言え、より美味しく飲めるに越したことはありませんよね!