愚息の独り言「フランスでの生活 第31話 ボルドーでの生活 2」
ロベールさん宅は(Robert ) ドアンス(Douence) という人口約100人の村にありました。
広さが縦5キロ以上 横5キロ以上の広大な村でその殆どが農家だった。
自動車でボルドー市からドアンスまで33km。多くの葡萄畑が目に入ってくる。
ただ有名なシャトーは無く大半は自分たちで飲むための物だった。
10月、ハーベストの時期になると、ドアンスでは 今日はだれそれさん家、 明日はだれそれさん家と 言う風に村中100人総出で葡萄狩りを手伝う。
背中に大きなかごを背負って 葡萄の房を背中のかごに入れて行く。
これが結構しんどい。屈んで作業するために子供の僕には結構大変だった。
そのかごに入ってる葡萄の房を歯車の様な( fouloir ) フルワ―に入れ それをまわしながら潰れた物を、大きな樽、又セメントで出来たプールのような所へ投げ込む。
昔は皆さんパンツ一丁になって足で葡萄を潰していたが、この頃はフルワーを使っていた。
約1週間もすれば葡萄の皮、枝などが完全に浮き上がって来るがそれをさらにかき混ぜると、 2週間後に醗酵していく。その頃に枝、皮、種を取り除く。
赤ワインの色は葡萄の皮、種がつぶれる事によってできる。
昔の作り方のほうが荒っぽいが、身体には良い物だったと思う。
果物の一番の栄養分は皮際と種にあることを昔の人は知っていた。
素人ほど防腐剤が云々言うがボルドー赤ワインは原則防腐剤を使わない。
作業で一番大変なのが葡萄狩りだ。
その夜は村中が集まって採れたての葡萄ジュース、昨年の樽出し葡萄酒を皆で飲む。
村中の食料品: ウサギ、鶏、豚、野菜などを皆が持ち寄って食べる、飲む(ギョルトン)、まるでお祭り騒ぎだ。
このハーベストが3週間ほど続く。子供達も学校へ行く暇はない。
このギョルトンは夜7時ごろから朝の1時まで延々と飲んで食べる。
小学生の女の子も葡萄酒を飲んでいる。僕も飲む。
木のテーブルをくっ付け合わせ 周りには鶏そして牛の首輪の鐘がなる。
豪勢な料理をピクニック気分で味わう。
日本人と違って酔っ払っている人は居ない。皆酒も強く またよく食べる。
肉は少々硬いが味が有って食べごたえが有る。
陸の孤島の様な所で遊ぶところが無い。
バスが一日1台猛スピードで通るだけでパン屋は毎朝近所の村から 2chevaux 車のバンタイプの車が届けに来る。
他は肉野菜の自動車が週に3回通るだけ。
だからこの葡萄狩りは一大イベントである。
しんどいが、それ以上の喜びが有る。子供も年寄も女も男も皆で手伝い皆で楽しむ。
日本人として人種差別を唯一受けなかったのがこの村だ。
最近イタリア、スペイン、オーストラリア、ニュージーランド、カリフオルニア、チリ、アルゼンチン とどこでもここでも ワインを作っているが フランス人の様に葡萄酒が生活に密着した国はない。
アメリカ人もワインを飲みだしたのは最近であり、フランス人の様に庶民の飲み物ではなかった。
フランスは長年に渡って自給自足の出来る数少ない国の1つだった。
フランスは最近ワインを飲む量が減った。
むかしは1人一日に1本以上だったが現在は4日に1本の量らしい。当然飲まない人達も含めての数である。
その代わりビールとウイスキーの消費が増え、ワインもやたらと格付けがどうのとか 訳の分からない事を言って値段を吊り上げている。
食は地方にあり。真にフランスの食生活は贅沢だった。
国も豊かだが何千年もの食文化が成し得る事である。