ノムリエの追言「格好良く食事するには(マナーは)?」
毎年3月又は4月に スイスのバーゼルという町で世界最大のジュエリー・ウォッチ・フエアーが開催されます。
45年ほど前に フランスの美人ファッション・コーディネーターの方に 「今日一日の来場者で一番おしゃれな方は?」と質問すると、「ある日本人の男性でした。」と言われ・・・・?。
日本人も此処まで来たかと 唸った事が有ります。
私は60年前位に多くの日本人がくたくたの洋服に肩からカメラを2台ほどぶら下げて首を振り振り歩く姿を思い起こし、本当かなあと何度も聞き返しました。
おしゃれな人は増えました。しかし格好は如何でしょう?
パリー・ニューヨークの人は歩くのが早い。そして格好が良い!
そうです。歩き方教室へ行かなくとも早く歩けば歩き方は自然と綺麗に成ります。
オリンピック100メートル選手の走り方はまさに様式美そのものです。
つま先を蹴リ出す様に踵から着地。走るのも歩くのも同じです。
食事も同じです。
どうも日本人は食事をさっさと食べたらごろりんと横になる人が多いイメージです。
フランス人の食事姿はエレガントに見える事が多いのは何故でしょう?
歩くのも座るのも姿勢が良いのです。
テーブルの縁の真下に椅子の縁が来るように位置づけ、椅子の半分に腰掛けます。決して椅子の背にもたれません。
もたれても良いのは 御老人です。
その代わりどなたかが椅子を引いてさしあげなければなりません。
そうでないと敷物(カーペット)を傷めてしまいます。
椅子の半分に腰掛けますと、丁度テーブルの縁にお腹がつきます。
背筋が真直ぐになり食べている物が落ちても真下でお皿が受けてくれます。
手は下におかず手首から肘迄の中間がテーブルの縁にくるようにします。
手を膝の上に置くと隣の女性の膝を触っているのではないかと勘違いされますのでご用心!
ナイフ・フォークは端から。グラスも手前から。
あくまでも下げ易さの為です。
ナプキンは右膝にかけるのみで食べた後軽く口を拭く。
グラスに匂いや油を着けないためです。
ワインは先ほど食べた物の味を消すためですが、実はこの瞬間が美味しい!
最近まで殆どのフランス人は食事中以外ワインを飲まない。
私もそうです。
そして多くのフランス人はワイン無しで食事する事は出来ませんでした。
ワインは調味料のような物でワイン無しで料理を食べるのは味の付いていない料理を食べるようなものなのです。
そしてフランスでは肉以外はナイフを使いません。
高級な所へ行けば魚用のナイフは出ますが、一般には野菜をナイフで切ることはしません。
右手にフォーク 左手にパンです。
5センチ程度にちぎったパンを添えて野菜を食べます。
ですからレストランでテーブルに座ってパンが無いとオオーイ !箸が無いぞ!と思えてしまいます。
パンが別料金と言われますと、この店は箸にもお金を取るのか、となってしまいます。
我々が子供の頃、食事は黙って食べなければいけませんでした。
ヨーロッパもそうでした。最近は如何でしょう?
話好きのフランス人は 食べることの何と早いことでしょう!
飲み込むように食べるくせに テーブルにいる時間は長いようです。
あそこが美味しい此処が美味しいの後はノンポリの政治論に花が咲きます。
ところで両手をテーブルの上というのはご存知の通り、昔は拳銃を持っていない証明であり、グラスの縁にあとを残さないのは回し飲みをしていた習慣の名残です。
武士が刀を納めお茶を回し飲みする様子と重なります。
とにかくマナーの話はきりが有りません。
長い歴史の中で積み重なった、気配りの数だけマナーが存在するのですから!