ソムリエの追言「ワインも疲れる?到着したワインはすぐに飲んでよいの?」
その名も、「ワイン揺すり機」?
バター攪拌機(かくはんき)のようなものや、曲がりくねったレールの小型環状鉄道(こがたかんじょうてつどう)に、樽に車両をつけて走らせるといったものまで。
今聞くと何をばかげたと思いますが、当時作った人たちは、真剣だったでしょうね。
何をしたかったのかというと樽の中のワインを、様々な方法で揺らして美味しく熟成させようというものです。
船で海を越えたワインが、まろやかで飲みやすくなっていて、「きっと、海で揺られたせいだ」という話しから、この騒ぎになったようです。
単なる個人の発明にとどまらず、特許というところがスゴイです。
ワインの味わいの変化である、「熟成」については、当時「振動」が影響していると考えられていました。
果たして、「振動」や「移動」がワインの味わいを美味しくするのか。それは、判りません。
とりわけ、ある特定のワイン!にはです。
たとえば、当店からのワインは配送でお届けします。
そのワインをすぐに飲んでいいのか?
なんですが、気軽に考えれば何の問題もないと思います。
その中でも、すぐに飲まずに少し休ませた方がいいワインがあります。
特定のワインの一つ目は、スパークリングやシャンパーニュ。
こちらは炭酸(たんさん)ガスの溶け込みが味わいに作用します。
気の抜けたサイダーやコーラが美味しくないように、炭酸ガスが大量に抜け出てしまったスパークリングやシャンパーニュは美味しくないものです。
到着後はまさに炭酸ガスが活発になっている状態。
その証拠に、到着当日であればたとえ冷えている状態でもコルク栓を空けるときに感じる、コルクへの圧力はいつも以上で、気を抜いていると、コルクが飛び出したり、ワインが吹き零れたりします。
特に、シャンパーニュの炭酸ガスの気圧は、スパークリングよりも高いです。
また、シャンパーニュはその造り方において、長い期間、地下の静かな蔵でボトルで熟成をさせます。
その目的の一つは、発生した炭酸ガスを出来るだけワインの液体の中に取り込ませるためなんです。
そうです、到着したシャンパーニュも1週間くらい置いておけば、きっと、炭酸ガスが落ち着いてワインに溶けこんでいくはず。
そうすれば、あのグラスの底から湧き上がる泡沫が、途切れることなく続くのです。
でも、開ける前に刺激を加えたり、「ポン!」という勢いの良い開け方をしてしまうと意味ありませんが・・・
ボトルの中に、大抵、澱【おり:色素などの成分が、結合して固まりになったもの】 が発生しています。
通常静かに保管している時には、底になる部分(ボトルを横にしてれば胴体部分)にその澱がたまります。
【ちなみに、高級レストランでこの手のワインの納品は一旦、ボトルを立て、底に澱を沈めます。それから静かに横にして、セラーに積んでいくのです。こうすることによって、澱がある範囲を狭めることができます。】
しかし、輸送で上下逆さまになったり、振動することによって、澱は、ワイン中を舞うこと確実です。
澱をワインの味の一部として捉えるならその日でも結構です。
ちょっとした苦味がありますが・・・。
ただ、1週間なり落ちつかせるだけでも、澱がほとんど沈んで、より澄んだ味わいを楽しめることも事実です。
その後、飲む数日から前日にかけて、ボトルを立てておけば、更に熟成ワインの旨味を堪能できます。
「到着したワインはすぐに飲んでもいいの?」と訊かれることがありますが、答えは「もちろん、OKです」
ただし、時間に余裕があるのなら、発泡性のワインと熟成したワインについては少し休ませた方が、より美味しく楽しめます。
ワインの輸入と違い、国内での移動であれば、長くても1週間程度。
2~3ヶ月常に船の中で揺られているのと違い、配送に関してであれば、大きな問題ではないかと思います。
若い赤ワインにしても、白・ロゼにしても、はっきりとした澱などはなくても、ワインとしての様々な成分が液体中にあるわけです。
そう考えれば、到着後、一旦ワインを落ち着かせておくのがベターではあります。
ただ、ワインに絶対の決まりごとはありません。
今日、到着したのを飲みたいなら飲めばいいんです!
大きな味の違いはないと思います。
到着後は、箱を開封してワインに異常がないかを確認!
速やかに、40度の高温にならないところ、日光など当らないところに保管する!それが、一番大事だと思います!
【道上より】
ただし古いワインは1週間から10日寝かせた方が良いですね。
勿論飲む1週間前から立てて置いて欲しいものです。
これは澱の問題だけではないようです。
又、作り手によって船旅をした方が美味しいワイン(シャトー・ラ・ジョンカード)と船旅をすると不味くなる(シャトー・タランス)ワインがあります。
基本的に昔のワインは強かったと言う事でしょう。