ソムリエの追言「今までのボックス入りワインが美味しくなかったのは何故?」
初めて触れたバッグ・イン・ボックスはホテルでのパーティでした。
その色鮮やかな透明感とあいまって、飲みやすさとバランスのとれた味わい。
ワイン通以外なら、満足はしなくても納得する味わいです。
バッグ・イン・ボックスのワインが誕生してはや60年。
その誕生の目的は、気軽にワインを楽しめること。
気軽さとはやっぱり安く手に入ることが大事。
そのためには、低コストで大量に生産することが必要。生産者と消費者の目的が一致するわけです。
とにかく、アルコールがある前提で、ある程度の味わいであれば良い。
ヴィンテージや、細かい産地や、ブドウ品種、そんなもの名乗る必要がない。多くのブドウをより安く仕入れて、混ぜ合わせて味の均一化を行なって、市場に出すことが使命なのです。
それが、これまでの時代のニーズにも合っていたのです。
ブドウが原料の工業製品的な面。大量生産の機械的処理が当然になってきます。
太陽エネルギーと土壌のエネルギー。
その2つをもとにブドウの葉で植物のエネルギーがつくられ、蓄えられていく。
やがて、そのエネルギーはブドウの実となって、形になる。
ワインの作り手は、そのブドウに人間のエネルギーを加えていく。
こうして時間とともに出来上がるのがワインです。コストを下げて、大量生産することはエネルギーを拡散することです。
トップ・ブランドのワインを造る生産者は、エネルギーを濃縮をさせて、より「美味しい」と評価されるワイン造りを目指します。
美味しいワインが多いのは当然といえば当然。
サン・テミリオン地区のクロ・サンヴァンサンは、その銘壌地でありながら収穫量を4年かけて落としてエネルギーを濃縮させて、自分の理想とするワインつくりを目指したほどです。
初期のバッグ・イン・ボックスを含む、大量消費用のワインは、拡散させて薄まったエネルギーのワインで個性はなく、品質も基準を満たすだけのものにしか過ぎません。
目指しているものが全く違うのです。
実は、「量から質」の転換がきているとも、分析されています。ワインなら何でもいいという時代から、出来るだけ美味しいものを楽しみたいというわけです。
エネルギーの薄まった水のようなワインから、よりワインらしいワインを飲み始めているのです。
バッグ・イン・ボックスは、1980年代からフランスに広がっていきました。
今では、バッグ・イン・ボックスを購入する人々の関心は、大容量販売による割安感よりも、質の良いワインをグラス一杯、二杯味わいたいという関心に移ってきています。
その影響を反映させたのがヴィンテージ入りのワイン、AOCの原産地統制呼称入りのワインがバッグ・イン・ボックスなのです。
そう、バッグ・イン・ボックスの為に造られた大量消費用ワインではなく美味しく、長期熟成したもの、エネルギーの濃縮したワインがバッグ・イン・ボックスに生まれ変わる時代になったのです!
これからの日本でも、そういう時代に。
「ワインのない食事など、太陽の出ない日のようなものだ」
ブリヤ・サヴァラン【Brillat Savarin 1755~ 1826】
新しい、「美味しい」バッグ・イン・ボックス があれば、200年前のブリヤ・サヴァランの気持ちがわかるかも?
ワインは樽で熟成し、ボトリングしてから違ったレベルで熟成させます。
バッグ・イン・ボックスに入ってからは、酸素が無いので、酸化もしづらいですが、それ以上熟成もしません。
当店のシャトー・ラ・ジョンカードはAOC(原産地統制呼称)で。
Mis en Bouteille au Cahteau (シャトーでの瓶詰め、混ざりけなし)です。