ソムリエの追言「白ワインの一般的な造りかた」

ソムリエの追言「白ワインの一般的な造りかた」


「赤ワインについては解かって来たので白ワインはどうやって造るんですか?」
「前回の赤ワインの造り方に倣ってお話しましょう! 」

白ワインの一般的な造り方

というわけで、今回は【 白ワインの一般的な造りかた 】です!

前回の赤ワインの一般的な造りかたを読んでない人は、ぜひホームページのメルマガバックナンバーから読んでみてください。

読んでいる人には思い出せるよう、イラストをつけてます。

ワインをつくる 醸造過程は基本的に赤ワインも白ワインも一緒です。

実際のところ何が違うのでしょうか?

ブドウ果肉ジュースを発酵させたのが白ワイン。

ブドウの果皮・種を含めたごった煮状態が発酵した液体が赤ワイン。

と捉えてみてもいいかもしれません。

では醸造の流れを追ってみましょう。

白ワインは、基本的に白ブドウから造られます。 ※1

まずは、収穫を終えた房ごとの白ブドウを機械で実(果粒)と実がついている枝(果梗)とに分けます。※2

果粒をさらに機械で果皮を軽く破ります。※3

ここからが、赤ワイン醸造と違うところです。

白ブドウは、すぐに圧搾(プレス)されます。

皮がすこし破れた感じの 大量のブドウの粒を プレスする容器に入れます。

プレスとは、ブドウに圧力をかけて果汁を搾り取ることが目的ですが、皮・種と果汁に分ける目的もあります。

こうすることで、白ワインの爽やかな風味に、強い苦味と渋みをもたらす種・皮の風味をつけないようにします。(一方赤ワインでは、果皮・種と果肉を分けずにまず発酵させます。

その後に、色と渋みをつけるために「かもし」という漬け込みが行われています。

これが赤ワインになる儀式なのです。)

出来上がるのは、次の2タイプの果汁です。

プレス器のなかで、ブドウの重みで自然と流れ出る果汁(フリーラン・ジュース)と、潰してできるやや果皮などの風味が移りこんだ果汁(プレス・ジュース)。

エレガントな味わいのフリーラン・ジュースが白ワインでは特に重要です。

この果肉が潰れてできた液体こそが白ワインの素(もと)なのです。

この果汁ですが、まだまだ小さな浮遊物などが浮いてます。果皮の小さな粒子、細かいゴミなどの滓を沈殿させて取り除くために専用のタンクなどにいれ果汁を澄ませていきます。※4

澄んだ果汁は発酵用のタンクに移され、そこで糖分からアルコール発酵させて、ワインとしていくのです。

発酵温度は、赤ワインよりも低く18~20℃です。※5

発酵タンクの中の果汁は、果皮をとってしまっています。

赤ワインの場合は、果皮・種と果肉ごと発酵槽に入ってました。

天然酵母の多くは果皮についてるので、果汁をタンクに入れただけでは赤ワインの場合の様に発酵しないのです。

そこで培養酵母を加えて発酵をさせるのです。

力強い白ワイン造りを目指す場合、木樽の中で直接、発酵が行われることもあります。

特に新樽と呼ばれる、樽の木、焦げ目の風味が強いものを使うと、色の濃い、バニラフレーバーの香りが強い白ワインになります。※6

アルコール発酵が終わった後は、ほぼ赤ワイン同様の流れをたどります。

ワインによっては乳酸菌によるマロラクティック発酵※7 によってまろやかさが加わります。

その後、細菌汚染や、酒石酸とよばれる成分の結晶化を防ぐため多くの白ワインは冷却(0~-5℃)していきます。※8

こうしてワインを安定させた後、タンクまたは木樽での熟成により風味をつくりあげ、さらに清澄し、ろ過して瓶詰め そして出荷。

輝きのある透明感溢れる白ワインが私達の手元にやってくるのです。

※1 果皮の色がつかないように果肉・果汁を取れば、黒ブドウだけからも白ワインができるのです。

通常のワインでは珍しいですが、シャンパーニュなどが代表例です。ブラン・ド・ノワール

※2 除梗と呼ばれてます


※3
 破砕と呼ばれてます。除梗・破砕を同時に行う機械もあります。

※4 滓下げ、澱下げ、デブルバージュなどと呼ばれます。

※5 なお、それよりも低い10~15℃を低温発酵と呼んでいます。

低温での発酵では、ワインに好ましくない微生物の働きを抑え、 繊細な香りと味わいをワインに持たすことが出来るもので高級白ワインに用いられる技法です。

※6 樽発酵にすればすべて力強いワインになるわけではありません。

そのブドウの持つパワーが無ければ、樽の風味が勝ってしまい、ワイン本来の風味を味わえません。

一時期のカリフォルニア・ワインがこの傾向に走りすぎたといわれています。樽熟成にも同じことが言えます。

※7 乳酸菌によって ブドウの成分のリンゴ酸と呼ばれる鋭い酸味を柔らかな丸みのある酸にする乳酸発酵のことです。(MLF と呼ばれたりもします)

辛口白ワインの味わいの基礎となる酸味はこの過程を経るかどうかで大きく2つに分けられます。

MLFを経なければ爽やかなシャープな酸味をもつ辛口白ワイン、MLFを経れば風味豊かなまろやかな酸味を持つ辛口白ワインになります。

※8 一般消費者の白ワインに対するクレームの多くはこの酒石酸がらみといわれています。

酒石酸の結晶は、ボトルの底や、コルクの鏡面(ワイン液体と接していたところ)に多く見られ、「ガラスの小さな破片が入っていた!」などと間違われます。

ワインを味わうには、確かに邪魔者ではありますが、人体に害はありませんのでご安心を。