ソムリエの追言「ワインのスタイルを決める気候と雨」
暑い日が続きますね。
厳しい環境は人間にとっても、ブドウにとってもつらいです。
ブドウも30℃以上では、光合成(こうごうせい)の働きが悪くなるようです。
呼吸の方が多くなるようなんです。ちなみに 5℃以下では光合成がおこなわれないそうな。
ところで、植物の活動のリズムは、我々とは違います。
暦(こよみ)や時間なんて、人間だけのものですからね。
光も活動リズムにとっては大事なんですが、根の成長、芽吹き、開花や実をつけるなど、そういった植物の成長に関わってくるのが温度・気温なんです。
その気温は、各地の気候によって様々です。
フランスでも、ボルドーとブルゴーニュでは、気候が違います。
ご存知ボルドーは、大西洋のすぐ近く。
この地は、海洋性気候の恩恵を受けています。
海の温まりにくく、さめにくいといった水の特徴によって、昼と夜、季節ごとの寒暖(かんだん)の差が激しくありません。
また、暖流(だんりゅう)の影響で、比較的、緯度(いど)が高い地域ながらもあまり寒くならないようです。
大陸性気候のブルゴーニュ地方が、冬に氷点下になることを考えれば、ボルドーの海洋性気候は、ブドウの樹にとって過ごし易い気候・場所であるといえます。
海洋性気候のもう一つの特徴は雨です。
低気圧によって、雨が多い時期と、晴れ間の多い安定した時期とが、不定期にやってきます。
そうは、いっても、年間の降水量は、東京や日本のワイン生産地よりも少ないです。
また、夏から秋にかけての雨が少ないのも、ワイン作りにとって最適です。
実はこの雨の降り方が、できあがるワインに影響を与えるんです。
ボルドーでは、ご覧の通り、ブドウの生育期4月から9月末までの降水量がだいたい400mmくらいです。
一方、同じブドウ カベルネ メルローも使うカリフォルニアは全くというほど雨が降りません。
同じ6ヶ月で、なんと50~60mm!
ボルドーの8分の1です。
ワイナリーによっては、水分がたらなくて、水を補給する設備を用意しているところもあるくらいですから。
日照量の多さと温度も手伝って、どんどん、果実の成分だけが濃くなっていく。
だからこそ、ワインにあれほどの、果実の凝縮感(ぎょうしゅくかん)が生まれるんですね。
また、反対に日本の気候では、できあがるワインは、その対極で、どうしても水っぽさを感じてしまうんですね。特に赤ワインです。
この頃はどうなんでしょうか、品質が上がってきていると聞いてますが・・・。
そんな意味では、ボルドーの海洋性気候がもたらす雨の恵みはボルドーワインのエレガントさを造り出す、重要なエッセンスなんですね。
長い歴史の中で気温、雨、土壌 を含めてその地に最適なブドウが根付き、その魅力を発揮してきたのがボルドーワインです。