MICHIGAMIワイン頒布会に加入して頂いているお客様へお届けするワインを、テイスティングで紹介していきます。
今週はその中から、
J&L シャルルマーニュ MCMXXI
シャトー・ジュリアン 2005年
シャトー・ル・パップ 2005年
のテイスティングレポートをお届けいたします。
J&L シャルルマーニュ MCMXXI
まずは、スパークリングワインから。いつも通りしっかりと冷やしてから静かに開けてください。
グラスを持って、なるべく静かに静かに注ぎます。 どうでしょう、前回のシャンパーニュに比べて、炭酸(たんさん)ガスの広がり方、やや少なめに感じます。
ボトルを見てください。ラベルの下部に Methode Traditionnelleとあります。
メトード・トラディショネル 伝統方式 つまり ビンの中で 炭酸ガスを発生させたもので、本来、炭酸ガスの逃げが少なく、キメが細かく持続性もあるものになるのです。
そう、シャンパーニュと同じ造り方なんです。
メトード・トラディショネルならではの動ビン板(ピュピートル)
うーん、液面中央にあまりムース(細かな泡の集まり)がありません。グラスの縁に集まる泡、コルドンも多くないですね。
シャルルマーニュのプレステージ的ワインとしては「?」がつきますね。(グラスの状態などによって泡の出方が変わります)
メトード・トラディショネルなら、もっと、炭酸があってよいはずなんですが。とはいえ、泡の連なりはしっかりあります。
次に色合いを見てください。麦わら色に ほんのり、オレンジ色が加わったような印象を受けます。
黒ブドウを使った白ワインの色であるのですが、すこし熟成してるような感じです。
では、グラスを回さずに香りを嗅いでみましょう。
すこし強めの香りが採れると思います。色と偶然つながりますが、オレンジのような香りがしませんか?
甘さを感じさせるようなものです。ここに、ほんのりとヨーグルトのような香りが感じられます。
前回のシャンパーニュなどは、まずくぐもった(はっきりとしない) 酵母の香りか、樽(たる)からのパンを焼いたような焦げた香りが中心となりますが、このワインはすこし違いますね。
では、軽くグラスを回してから、香りを採ってみてください。
さらに柑橘系の香りが強くなった気がします。
ここで、ようやく酵母(イースト)の香り、パンの香りが出てきました。
この香りがあると、上質なスパークリングを飲んでいる気分にしっくりときます。
また、ドライハーブ・スパイスの香りもあります。全体的に複雑な香りですね。混ぜあわさったような。
では、口に含んでみましょう。ふくよかさを感じるしっかりとした口当たりです。柔らかな感じです。酸味は強すぎず弱すぎずです。
ソムリエのコメントでは、「中程度」なんていいます。それだけでは、さみしい表現です。
ところで皆さん、感じますか この味!口当たりからすぐに感じる旨みをともなう果実味!!いやー、美味しいですね。
どうしても、果実主体か、樽の風味が強くなるシャンパーニュやスパークリングが多い中、どうして、絶妙な味わいを出してます。
もう一度、口に含んで、口先をすぼめ空気を吸い込んでワインを口の中で攪拌してみてください。
果実味が中心のあとに、今度は、苦味が現れてきます。飲み込んでみてください。ここも、また普通のワインとは違いますよ。
余韻が非常に長いです、1.2.....8.9.10
口の中、鼻の奥から風味がきえても、まだほろ苦さが残っています。
それより気になるのは、この熱い感じです。舌にもその熱さが残ります。アルコールの熱さですね。
このワインもコニャック(高級ブランデー)がブレンドされているのでしょうか。同じ造り手のワインでは、同じように余韻が熱くコニャックが入っているものもありました。
のど越しにも熱さを感じます。ただ、面白いのはアルコール表示が12%と通常の表示。なのに、この風味。独特です。
この風味を更に活かすには、どうしたらよいでしょうか。トリュフ、それも、白トリュフなどはどうでしょうか。ちょうど季節ですね。
黒トリュフとは違う、優しくも華やかな香りと揮発するような力強い香気にほっこりとした臭いを併せ持つ白トリュフ。表現難しいですねぇ。
その香りを活かす白トリュフを使ったリゾットやパスタがお薦めです。
バター・チーズのコクに負けない強さをもつ味わいに、旨み伴う果実味に、そこにトリュフの華やかな香りが加わることによってより鮮烈な白トリュフ風味を味わえると思います。
味わいは、旨みと余韻の強さ、風味で非常に印象的でした。
これで、もう少しスパークリングの泡の持続性があれば、シャンパーニュに負けない一本としてお薦めします!
ちなみに MCMXXI は、ローマ数字で書かれた年号で、
それぞれ、
M=1000
C=100
X=10
I =1
を意味し、
最初のMで1000 次のCMで900 (1000-100 減算する決まり) XX で20 I で1
つまりは「1921」 シャルルマーニュ社創立の年号です。
ヴィンテージではありませんので。
続いては赤ワイン2種です。
Aシャトー・ジュリアン2005
B シャトー・ル・パップ 2005
どちらも 2005年です。
2005年は、リリースされているボルドー産ワインの中でも、グレートヴィンテージであります。
それを証明するかのような、2つのワインの色あい。
黒味が中心で、どちらも差がないですね。 グラスを傾けても外側の縁色が明るい部分・ムラサキ・ピンクがほんの少し見えるだけですぐに黒味のムラサキとルビー色があわさったような深い色合いです。
ここから連想されることは、果皮の色が濃いブドウ、完熟したブドウを使っていること、つまり良いヴィンテージであること、ひいては、味わいもそれなりにしっかりしてることなんです。
また、5年経っていますが、ワインの強さゆえに、熟成がゆっくりであること、この先も更に熟成していくことを示しています。
それぞれ、香りを採ってみましょう。
グラスを回さずですよ。どちらも、香りはするんですが、表現しづらい香ですね。すこし、ツンとくる香りで、華やかさはさほどないですが、逃しがたい香り
ワインの業界では、スミレの花 杉 インク の香りなど表現しています。
どうでしょう、あぁ言われてみれば・・・なんて、感じるでしょうか。
中心の香りは同じでも、やはり違いはあるわけです。思い切って、グラスの中に鼻を突っ込んで見てください。
先ほどの香りとは違う香りを探す意識をしてみてください。香りに麻痺して溺れたら、違う香りを嗅いでみてください。私はいつも 服の香りを嗅ぎます。すると、嗅覚が戻ってきます。
どうですか、A ジュリアン にヴァニラのような甘い香りが見つかりませんか。一方、Bのル・パップには、私はココアの香りを感じます。どちらも、甘い香りで樽からの風味の香りです。
さぁ、グラスを回して見てください。
それぞれ、果実の香りが出てき始めました。違いがわかりますか。
A ジュリアンには カシスの香りが採れます。
一方、B ル・パップはブラック・チェリーのような香りです。どこが違うかというと、A ジュリアンには果実の香りの中にほんの少し、すっきりとした印象があるのに対し、 B ル・パップは 果実の香りに濃さ、強さを感じるところです。
同じ様に、スパイスもA ジュリアンは ブラックペッパー、B ル・パップは ブラック・ペッパーもあるのですが、更に甘草など別のスパイスが加わった感じです。
5分もするとB ル・パップは 生肉や血のような香り。燻したような香りも出てきています。
では、お待たせしました。順番に口に含んでください。まずはAからです。色合いが同じでも、香りで、軽い・重い(濃い)の差がつくなら、まずは軽いものからです。
A ジュリアンは ふくよかですね。酸味も穏やか。果実味から渋味へと素直な流れです。果実味がふわっと全体の形をつくっていて、コクもあるけど 柔らかな印象です。
続いてBです。Bル・パップは なめらかな口当たりです。こちらも酸味は穏やかです。こちらは、果実味とコクをしっかりと感じます。凝縮とまではいきません。口の中で攪拌させてみると、香りの中にあったココアに近い風味、コーヒーなどが感じられます。
この風味が実にいいバランスで甘味と果実味をあわせ、ワインの味の中心を作り上げてます。
ちょっと、Aジュリアンに戻ってください。
口に含むと 先ほどの 柔らかなコクの印象が違いますね。軽やかで果実味になっています。酸味も先ほどより感じます。
空気を吸い込み口の中で攪拌すると、果実の味わいとそこに少し旨味が感じられます。また、それぞれ 口先にワインをためてみてください。しばらくして、ワインを口から出したあと、どちらが、渋味を感じますか。
歯茎が引きしまるような感覚が強いのは Bル・パップですね。かすかにタンニンのザラつきも感じます。余韻も見てみましょう。それぞれ飲んでみて下さい。
Aは1.2.....6
Bは1.2.....7.8.9
飲み込んだ余韻は Bル・パップが長いですね。ここからも、Bの ル・パップの方が上質であることがわかります。
そうです。AとBとでは、酒質がかなり違います。色合いが似ていても、香りに、そして味わいにこれだけの差がでてきます。
その差を活かして料理とあわせるなら、A は シンプルに 肉を焼いたものに軽いソースと野菜の風味が合いますね。すこし旬には、早いですが、ごぼうの風味とも合いそうです。
ごぼうを細ぎりにして、牛肉をまきつけ、たれで焼き上げたものなど、このワインの上品な酸味と渋味がごぼうの風味と肉をつなぎあわせてくれます。
「たれ」にワインを加えておけば、極上の「マリアージュ(料理とワインの相性)」間違い無しです!
Bには 果実と樽からくる甘さがありますので、焼き上げるよりも、煮込み料理がいいですね。果実を使った煮込み料理、たとえば 豚、牛、羊肉のプラム煮なんていいかもしれません。
「燻した香り」の特徴も活かして、ベーコンを加えると更に、ワインの風味にあってくると思います。プラムでなくても、先ほどのごぼうと赤ワインで煮込むなんてのもアリです。
どちらも、名高いワインを生み出す産地からの、飲みやすさを求めたワインに感じられます。ただ、それぞれ、やり方は違っています。
ジュリアンは オー・メドック特性の柔らかなコクを活かしていると思います。今飲んでも、それなりに美味しくは感じられます。
そして、熟成も可能。早飲み、熟成、やはり両方を狙うのは難しいですよね。
せっかくのグレート・ヴィンテージ 熟成向きのワインとして、カベルネの比率を高めて造ってみても良かったのではないでしょうか。B ル・パップは メルローを使うことで、しっかりとしたコクを出しています。
その結果として樽の風味と果実味があわさった感は見事です。それだけの果実の力がなければ、樽の風味に負けてしまいますので、さすがは、1級シャトーにもなった、シャトー・オーブリオンをつくるグラーブ地区 ぺサック・レオニャン地域だと思います。
ただ、地域特性のスパイシーさについては若干物足りない感もあります。2つのワインの産地はボルドーで格付けされているワインを多数出している地域です。
その格付けワインの多くは、高額でリリース直後は、飲むのにまだ早いといったワインを造っています。
一方で、名高い産地でありながら、飲みやすさを追求する姿勢が見えるワインがあるのも事実です。
この姿勢のまま頑張ってほしい反面、せっかくのグレートヴィンテージ、思い切ったワインつくりをしてもいいのでは?
2つのワインのテイスティングからそんな感想をもちました。