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名人のこだわり「ジビエについて」

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名人のこだわり
「ジビエについて」

ジビエという物は、
家畜と比べると味の幅が大きいです。

家畜は決まった屠場で殺され、放血をされます。
ジビエの場合には猟師さんが撃って、処理をします。
その事で幅が広くなるのです。

また、季節によっても風味が変わってきます。
例えばエゾ鹿で言えば、秋になると山が枯れてくる。
枯葉のような香ばしい匂いが蝦夷鹿の肉に出てくるんです。

北海道の猟師さんなどは、
夏の鹿に比べ秋の鹿の方が香ばしくて好きという方もいらっしゃいます。
ここはクオリティの問題では無く、好みの問題です。

スッポンも「ジビエ」ですね。
スッポン焼きスッポン
スッポンの血のフラン
焼いた間々田カブと山牛蒡


ジビエは「どこでどのように獲られたか」が大事な部分ですが、
猟師さんの所まで追って行く事もできます。
蝦夷鹿の時は猟師さんを決めて、お願いをしていました。

「今度煮込む料理に使いたいから、一歳前後の肉が欲しい」とか
「フィレはもう少し歳が行っているものがいい」
などと、お願いできましたし、
「どこでどのように獲られたか」についての情報などもやり取りできたので良いのですが、普通だとそう言う事がなかなか難しいのです。
肉の部位だけで、誰が獲ったかも分からない、となれば、
もう仕入れ先しかなくなってしまいます。

吉野の鹿は、吉野の鹿でブランドを保とうとしていますので、
味には一定の安定はあります。ジビエでもそういった物はあります。

しかし、そういった指定が全くできないジビエもあります。
ヨーロッパから入ってくるジビエですね。
日本にいないので、ヨーロッパから入れるしかない物としては
ピジョン・ラミエール(モリバト)、赤雷鳥、ペルドロー(山ウズラの雛)などです。

輸入のジビエに関しては、どういう状況で入ってくるか全くわからないんです。まあ、ある程度は輸入する所で選ってはくれるのですが、それでも誰が獲ったかなんて全くわかりませんし、どんな状況で獲ったのか分かりません。

ただ、向こうにはドゥミ・ソバージュ(半養殖)という物もあります。
ペルドロー、フェザン(キジ)、コルベール(マガモ)等です。
それは、飼育している物なので
撃つわけでは無く飼育と同様の処理になり安定していますが、
輸入のジビエは、ものすごく良い状態で来る物もあれば
それこそ、ボロボロの物もあります。こちらからは数を指定できるだけです。

そうなってくると、今度は全てが店の責任になります。
店側の処理がイコール、料理の味になるからです。
ジビエの問題はここに帰結すると考えています。

来た物に対してどうするかは店の判断に委ねられるんです。
「ここは血が回りすぎているので使わない」とか
「これはこうだから、こう処理しなければならない」と
店側が考え、判断しなければならないんです。

一番良くないのは
「ジビエはこういう物なんですよ」と、
処理の不備を、ジビエのクセのせいにして出してしまう事ですね。

風味という点では、青魚を好きな人でも
アジを食べる人、サバを食べる人、
それぞれに持っている風味が違うからそれぞれ好きな方がいるんです。
「ジビエのクセ」というのはあくまで風味です。
血が回ってしまっている、というのは全く違う話なんです。

生臭いサバを、「これがサバなんですよ」と出すのはおかしいですし、
更には血が回っておらず臭みの無いジビエに
「ジビエっぽくない」という事は、もっとおかしな話です。



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