RSS

2011年6月度 頒布会ワイン・レポート 2/3「戦場の穏やかなワイン シャトー・ピュイ・ランドリー2001年」




ソムリエの追言
「戦場の穏やかなワイン 頒布会ワイン・レポート VOL13-1」
※外国の方の読者も多くいらっしゃるので、漢字にふりがなをつけてお送りしております。

ボルドー5大コートコート・ド・カスティヨンのワインです。

ピュイ・ランドリー 2001

外観
黒味を帯びたガーネット透明感もあまりありません。

黒味がかったガーネットややグラデーションの幅が大きい。
透明感とエッジの部分に赤・朱色・茶色 
ワイン外観

香り
八角、丁子などの甘・苦いスパイスの強い香り
ラズベリーのリキュール
スミレのドライフラワー
熟成のブーケ

味わい
なめらかな口当たり
酸味が穏やかです。 
果実味、 コク、 渋味がバランスよい。
質感のなめらかさのなかで果実味の甘さ旨さを感じます。

自然に寄り添う
きれいな熟成感。
メルロー種によるものです。

実は、メルローというブドウは、ボルドーの中でも、比較的新しいブドウ品種。
歴史的記録では、18世紀後半には、サンテミリオンなどの内陸部でメルロー種が使われていたようです。その後、現在では、この地を含め、ボルドー全体でも、メルローの栽培比率が多くなっています。(高級ワインのメドック地区周辺を除きます。)

ボディもコクはあるものの、柔らかなタイプに仕上がるので
今回のような、バランスのいい熟成になったと思います。

柔らかいといっても、それは、カベルネ・ソーヴィニヨンに比べてのこと。カベルネ・ソーヴィニヨンが主体ですと、10年程度でこのなめらかさ、に熟成するのは難しい。もっと時間がかかります。

そうそう、そのメルローで、世界をあっといわせたワインが
お隣のサンテミリオンやポムロールから続出しました。

ポムロールのシャトー・ペトリュス 、シャトー・ル・パン、
サンテミリオンのシャトー・ヴァランドロー。

今では、5桁(けた)、6桁の高額ワインです。
このためか、メルローのブームが起き、世界でメルロー100%のワインが増えていきました。
シャトー写真イメージ
とはいえ、この地は、その気候や土壌(どじょう)からメルローとともに歩みを進めてきた。シャトー・ピュイ・ランドリーの造り手は、畑の土や環境への敬意を払い、自然なワインを目指しているといいます。

造りこんだメルローではなく、自然体のメルローの熟成を感じたのは、偶然ではないと思います。

戦場のブドウ畑
そんな、土地にも、血なまぐさい歴史が。

矢が降り注ぐ、砲弾(ほうだん)が炸裂(さくれつ)する。 馬の下敷きになる者、手斧(ておの)を振りかざす者、怒号(どごう)と悲鳴、爆音と金属のぶつかり合う音が辺り一面に響き渡る。 甲冑(かっちゅう)をつけた兵士達の壮烈(そうれつ)な戦い。

イギリスとフランスとで行なわれた100年戦争<1337-1453>。
まさに、戦場となった地。

「カスティヨン=ラ=バタイユ(Castillon-la-Bataille)」【バタイユ(仏語で 戦いの意)】

その地を、中心にしたワイン産地、
コート・ド・カスティヨン。

イギリス人には、イングランド軍の指揮官であるジョン・タルボットが敗れた地といえばわかるようですが。 我々、日本人には今ひとつ。<当時日本は、室町時代。銀閣寺で有名な足利義政将軍の時代です。>

ワイン好きにはボルドー銘壌地 サンテミリオンの隣といった方が判りやすいです。

地図


そんな歴史的な地域(?)は、ワインの歴史にも、登場。
ボルドーの最も古いぶどう畑の一つとしてその名を残しています。

そう、カスティヨンのブドウ畑は歴史を見てきた。 近現代でも、フランスワインにとって、イギリスは欠かせません。 100年戦争当時 イギリス領だったボルドー。イギリスとフランスの狭間で、揺れ動いた激動の地。

ワインで暮らす人々は、ワインを、ブドウ畑を守るため、必至に生き抜いた。
その人たちの、思いが、土地とブドウに受け継がれて、今の目の前のワインがある。

そんなことに思いを巡らせながら、ワインを飲んでみる・・・。

深いです!



▲ページ上部へ

頒布会

ページトップへ